航空会社の戦略(1)日系キャリアに千載一遇のチャンス到来 (1/3)

img4ccf785dd9adc.jpg 10月31日からの冬期スケジュールの開始にともなって、羽田空港の本格的な国際化がはじまった。定期チャーター便だったソウル(金浦)、上海(虹橋)、北京、香港の各路線が定期便となったのに加えて、新規路線も次々と就航。路線・便数も多い日系航空会社にとって、近年にない大きなビジネスチャンスであることに間違いない。運用的な制限はあるものの、各社とも新たな需要の創出に大きな期待をかけている。


>JL高需要路線でイールド重視、NH新規路線でシェア拡大ねらう
主要ターゲットはビジネス需要、地方需要で仁川との競争にも自信
公示運賃は羽田が若干高め、成田との需給調整も必要か



JL高需要路線でイールド重視、NH新規路線でシェア拡大ねらう

101102_haneda_02.jpg 羽田空港の国際化にあわせて、日本航空(JL)、全日空(NH)とも従来のアジア近距離便に加えて、新たな国際路線を展開している。両社が新たに飛ばすのは台北(松山)、バンコク、シンガポール、ホノルル。JLの単独路線はサンフランシスコとパリ。NHはロサンゼルスに就航した。合計でJLが10路線で1 日13便、NHが8路線で1日11便という規模。単なる増便を超えた、まったく新しい路線展開だ。

 両社とも路線の選定は、2国間の協定や政策上の制限を考慮して決めざるを得なかった。昼間時間帯は政策上、アジア近距離のビジネス路線という制限があるため、従来の定期チャーター路線に加えて、台北線(松山)の開設と香港便を深夜早朝時間帯から移動させるにとどまっている。上海および北京については、両社とも増便の希望はあるが、すべて今後の日中航空交渉次第だ。

 一方、早朝深夜時間帯の長距離路線について、JL国際営業部路線販売グループ・グループ長の越智健一氏は「パリ、サンフランシスコともビジネス需要を見込んで就航を決めた。それぞれの都市からの以遠も期待できる」と語り、イールドの高いビジネス客に焦点をあてた路線決定であるとした。また、パリ線については、「JL単独路線なので、ビジネス、レジャー双方の市場で大きな強みになるはず」と勝算を見込む。

  NHはロサンゼルス線を高需要路線と位置づける一方、他の欧米路線への就航は避けた。NH企画室ネットワーク戦略部主席部員の江崎隆洋氏は、その理由として「深夜早朝時間帯の23時から5時までは、騒音対策のため2500メートルのD滑走路しか使えない。大型機でヨーロッパやアメリカ東海岸に飛ばしても、収益を担保するだけのペイロードを満たせないと判断した」と明かす。ただし、滑走路運用の緩和、収益を担保できるだけの新しい機材の導入、就航空港の発着枠や発着時間の確保など環境が変われば、状況は変わってくるとの考えも示す。そうした意味からも、NHでは大型機並みの航続距離を持ちながらも経済効率が向上するボーイングB787型機の導入に期待しており、羽田路線でも有効活用していきたい意向だ。