旅行会社の戦略(1)羽田便の特性をいかした商品造成に創意工夫 (2/4)
深夜早朝便の商品造成で工夫、選択肢増は消費者にメリット
10月31日の冬スケジュール開始にあわせて羽田発着を開始する国際線は、昼間時間帯でソウル(金浦)、上海(虹橋)、北京、香港、台北(松山)、深夜早朝帯でバンコク、シンガポール、ホノルル、サンフランシスコ、ロサンゼルス、パリ。このうち、ソウル、上海、北京、香港については定期チャーター便から定期便に変更となる。
主要旅行会社各社は、ほぼすべての路線で商品を造成し、8月中旬頃から順次販売を開始した。就航地のモノ・デスティネーションコースだけでなく、就航地からの乗り継ぎ商品も設定している。例えば、バンコク経由でアンコールワットやプーケット、シンガポール経由でバリ、ロサンゼルスやサンフランシスコ経由でラスベガスなどの商品も多い。各社とも主力ブランドでの商品展開だ。
JTBワールドバケーションズ常務取締役の八木澤昌弘氏は羽田便の商品化について、「現行の成田便の時間帯と大きく違うので、それにあわせて商品を造った」と語り、その象徴的な例としてハワイ商品をあげる。現行の成田便は、夜出発して朝ホノルル着だが、羽田便については日本航空(JL)便が午後10時 30分発の午前10時45分着、全日空(NH)便が午前0時05分発の午後0時40分着。いずれも、ホテルのチェックインがこれまでよりもスムーズにできる時間帯の到着になる。また、ホノルル発も両社とも成田便と異なり夕方になるので、出発までの現地滞在時間が長くなる。「これは消費者にとって大きなメリット」と八木澤氏。成田商品とは異なる時間軸の商品を提供することができ「消費者にとっては選択肢が増えることになる」(八木澤氏)ため、海外旅行市場の底上げにつながると期待する声は多い。
これらの特性をいかし、各社ともハワイ商品では午後3時チェックアウト可能なホテルのラインナップをそろえ、顧客に選んでもらえるようにしている。最終日の過ごし方については、自由時間でのオプション対応がメインだ。エイチ・アイ・エス(HIS)東日本ツアー事業部第二旅行事業グループ・グループリーダーの小田孝之介氏は、「午後6時出発だとホノルル空港へ向かう道は混む時間帯。それに巻き込まれない場所を訪れてもらう工夫も必要だろう」と、これまでとは違う顧客対応の必要性にも触れる。
今回の羽田国際化の大きな特徴となっているのが、深夜早朝枠の国際便だ。バンコク、シンガポールを含めたロングホールのデスティネーションはすべて深夜発。また、11月から2011年2月にかけて順次開始する外国航空会社の羽田便のなかには早朝発もある。到着については夜遅くなる便も多い。
各旅行会社では、こうした深夜早朝便に対応したサービスを提供している。羽田空港周辺駐車場の無料あるいは優待利用、羽田空港周辺での前後泊プラン、タクシー会社との提携による定額タクシー事業など新たなサービスを提供することで、首都圏はもとより地方の需要も取り組む工夫を考えている。