旅行会社の戦略(1)羽田便の特性をいかした商品造成に創意工夫 (4/4)
( 2010年10月19日 )
深夜早朝便で新しい需要創出に期待、若年層が動くか
各航空会社は羽田便についてメイン・ターゲットを首都圏のビジネス客と見込んでいる。しかし、旅行会社のなかには、一日の仕事が終わったあと深夜便を使って出張に出かける需要がどこまであるのか、疑問を呈するところも少なくない。HISの小田氏は「ビジネスよりもレジャーの方が需要は高いのではないか」と予測。また、ジャルパックの奈良部氏はJLの戦略を念頭に置きつつ、「ビジネス需要の動きは通常週頭。航空会社としては、週末はレジャーで埋めることも必要になってくると思う」と述べ、金曜日の深夜便を使えば、月曜日の朝に帰ってくることも可能になり、「わざわざ休暇を取らずとも気軽に海外に行ける機会が増える」と見込む。また、日本旅行営業企画本部海外旅行事業部マーケティングチームマネージャーの七海聡子氏は「仕事を終えたあとに海外旅行に出かける傾向は、成田よりも羽田の方が高い」と語り、深夜便のメリットに期待を寄せる。
その時間帯から体力的にも「若年層が動くのではないか」(KNT山内氏)という見方がある一方、「会社帰りに海外旅行に行く需要を考えた場合、30代、40代の女性が牽引するのではないか」(ジャルパック奈良部氏)という予想もある。また、阪急交通社東日本営業本部メディア営業三部長の新井富雄氏は「お客様は成田と羽田とを見比べて商品を選んでいるようだ」と語り、首都圏発商品に対する消費者動向に変化が出てきていることを指摘する。いずれにせよ、「羽田便が加わることで、消費者にとっては首都圏からの出発の幅が広がった」(JTB八木澤氏)のは確かで、今までにはなかった新しい需要を生み出す可能性を秘めているといえるだろう。
取材:山田友樹