航空券ホールセラーから見る需要動向(1)レジャー取込に手応え(2/3)

人気の昼間アジア線とシンガポール線

110215_haneda_03.jpg そうした状況のなかでも、現在までのところ相対的に好調なのはアジア路線。特に興味深い傾向が出ているのがシンガポール航空(SQ)の羽田便だ。シンガポール線は、SQの1日2便に加えて、日系2社もそれぞれ1日1便を就航、成田便も運航しているため、当初は供給過多という懸念があった。しかし、クロノスによると、取り扱い件数ベースで、SQ全体の30%が羽田のシェアになっているという(2010年12月22日取材時点)。「成田便が食われたというよりも、全体でプラスになっている」と加本氏。その一因として、同社営業部販売課アジア・オセアニアチーム主任の徳山希美氏はSQ便のシンガポール到着時間から、「東南アジアへの乗り継ぎ需要の増加があるのではないか」と説明する。

 同様に、SQ航空券を扱っているOTAの奥泉氏も、「デンパサール、プーケットなどリゾート路線に乗り継げるので、SQ羽田便はレジャーにはメリット」と話す。同社では、羽田便が加わったことで、昨年11月と 12月のSQの扱いが前年比30%増、羽田就航による成田便への影響も数字的にはないという。また、エバー航空(BR)の台北(松山空港)線も好調のようだ。クロノスのBR取扱件数のうち、同便のシェアは50%にも及ぶ(2010年12月22日取材時点)。

110215_haneda_04.jpg 加本氏は、「特に午前便が人気。2泊3日の旅程が可能になり、商品化もしやすくなったのではないか」と分析する。OTAでも「羽田就航に加えて、中国での(尖閣諸島)問題があったため」(奥泉氏)、台湾の需要が伸びており、同社が販売するBR利用のパッケージ商品エバーシオンの売れ行きも好調だ。

 他のアジア路線も、想定以上の需要拡大とはいかないまでも、ある程度の手応えは感じているようだ。マレーシア航空(MH)のコタキナバル線について、クロノスの加本氏は、「就航地がレジャーデスティネーションであるため、販売層が決まってくるものの、そのシェアはMH取扱件数のうち10%(2010年12 月22日取材)」と明かす。キャセイパシフィック航空(CX)の香港線は「前年と同じ水準」とOTAの奥泉氏。NTSの篠原氏は「既存路線の韓国線の販売が伸びている」と話す。

 また、日系航空会社の扱いが多いベルツアーは、「近距離路線では羽田利用が増えている」との見解を示す。同じく日系航空会社の航空券をメインに扱うマイパックも「業務渡航で韓国、中国、台湾の反応がいい。ロングは不評」と回答。昼間時間帯に飛ぶ近距離路線のメリットは市場に受け入れられているようだ。