航空券ホールセラーから見る需要動向(2)地方需要取込へ施策 (1/3)
羽田空港の国際化によって、消費者の選択肢は広がったことは間違いない。中でも、日本国内路線の乗り継ぎによる地方からの羽田発海外という需要拡大に期待が寄せられていた。しかし、各社の話を聞くと現時点では神奈川や東京といった首都圏からの利用者がほとんどで、羽田の国際化が地方需要取り込みの起爆剤とはなっていないようだ。ただし今後、米系航空会社が就航し、選択肢が増えることで新たな需要が生まれることが予想される。ホールセラー各社ではキャンペーンや施策を展開し、地方需要の取り込みに攻勢をかける。
>地方需要の取り込みに課題
>キャンペーンで需要喚起と認知度向上
>羽田発タイのパッケージが好調 エーアンドエー、TG羽田便は新しい時間帯の効果大
地方需要の取り込みに課題
羽田空港国際化で最も恩恵を受けているのは、そのアクセスのよさから首都圏からの旅行者だろう。各航空会社もまずその利便性を最大のメリットとして、消費者にアピールしている。各社のこれまでの実績からも、その点は明らかなようだ。エヌティーエス(NTS)航空営業部次長の篠原和儀氏は「現状では首都圏の旅行会社の利用が多い」と話し、クロノス・インターナショナル営業部販売課アジア・オセアニアチーム主任の徳山希美氏も「横浜などの旅行会社による羽田便の集客が多い」と明かす。
一方で、新たな需要創造の機会として期待されていた地方需要の取り込みについては、苦戦が続いている。クロノス・インターナショナル営業部販売課販売推進チーム係長の加本謙吾氏は「地方からの問い合わせは多いが、それが集客にまだ結びついていないのが現状。潜在性はあると思う。米国線が就航すれば、状況が変わってくるかもしれない」と話し、まだ眠っている需要の覚醒に期待を寄せる。NTSの篠原氏も「東北、北海道、九州方面のエージェントに向けて羽田の乗り継ぎメリットをアピールする販売展開を進めるが、期待したほどの効果は上がっていない」と現状を説明し、「まだ羽田の国際線が浸透していないのではないか」と分析する。
地方での認知度不足については、クロノスの加本氏も「羽田国際化は知られているとは思うが、どこの航空会社がどこに何時に飛んでいるのかまではまだ浸透していないように思う」との意見だ。クロノスでは、随時スケジュールなどをエージェントに知らせてはいるものの、集客の増加には結びついていない。羽田国際線の中身の認知が浸透していないことに加えて、早朝発や深夜着の便では同日の国内線への乗り継ぎが不可能という現実的な問題も大きい。また、「地方発では仁川というハブ空港が隣国にある」(ベルツアー)と、羽田と仁川のハブ機能の差を指摘する声もある。
そうしたなか、羽田便の時間的制約から発着地を変える傾向も出てきているという。NTS航空営業部営業グループチーフの阿部鉱三氏によると、羽田到着が深夜になる便については、帰りを成田にする旅行者も増えきており、「利用者にとっては(羽田国際化によって)選択肢が広がったということだろう」と話す。クロノスの徳山氏も「地方の取り込みにはまだ課題が多いものの、羽田から出て、福岡に帰るというコンビネーションも出てきている」と明かし、これまでとは異なる需要の潜在性を暗示する。また、ダイナスティーホリデーは「東京発(羽田)のパッケージツアーに、地方からの参加者も見られ始めたのは新しい傾向」と回答。外航ながら羽田のハブ化に期待するところは大きい。