航空会社の戦略(2)外航、深夜早朝発着で未知のビジネスに挑む (4/4)
成田は大切なハブ、地方需要の取り込みには限界も
運賃設定については各社対応が異なる。「羽田は多少高くても売れるのではないか」(AA稲葉氏)、「利便性を考えるとPEXで羽田を若干高くする」(DL伊藤氏)、「羽田を差別化しない。インベントリー・コントロールで変わってくる」(ACワイス氏)、「成田と同じ運賃の方が需要動向は測れる」(TG杉岡氏)、「基本的には運賃は同じ。需要動向によって、より安い運賃を提供できる便が決まるだろう」(SQウィルソン氏)など考え方は分かれる。羽田と成田のコンビネーションについては各社とも柔軟に対応していきたい考えだ。
羽田国際化後の成田の位置づけについては、各社とも引き続き「大切なハブ空港」という認識だ。DLの伊藤氏は、アジアと成田とアメリカを結ぶ路線の重要性と利便性を指摘。AAの稲葉氏も「出発の遅い成田便はアジアからのフィード客を拾える」と成田のメリットに触れる。ACのワイス氏は「スターアライアンス・メンバーとのネットワークは大切」と語り、成田でのアライアンス関係を重視する姿勢を示す。AAにとっては、独占禁止法の適用免除(ATI)によるJLとの本格的なジョイント・ベンチャーのもとで羽田と成田の戦略も変化しそうだ。
地方需要の取り込みに関しては、日系航空会社に比べて不利な状況にあり、現時点では羽田のメリットをいかしきれないのが現実だ。JL、NHをアライアンス・パートナーに持つ各社は、今後それぞれの国内線での協力関係を築いていきたい考え。また、日系航空会社のパートナーを持たないスカイチームのDL伊藤氏は地方需要の開拓について、既存の関空線と中部線を「私たちの財産」と位置づける一方で、羽田路線を持つ第三の日系航空会社との連携を模索していきたい考えだ。
深夜早朝時間帯という制限がある外航各社にとっては、羽田市場はまだ手探り状態という側面が強く、収益性もはっきりしない。「2013年の増枠に向けて就航実績を残しておく必要がある」(ACワイス氏)という意見があるように、今回の羽田就航は各社とも長期的視野に立ったビジネス判断という側面も見え隠れする。しかし、いずれにせよ、羽田の潜在性を高く評価していることには変わりはない。成田とは異なる新しい市場は生まれるのか。外航各社の今後の展開に注目が集まる。
取材:山田友樹