大交流時代へ-成長戦略から見る首都圏空港の将来像(1/3)
10月21日に第4滑走路の供用が開始され、本格的な24時間国際空港としての第一歩を踏み出す羽田空港。まず第一弾として昼間時間帯3万回、深夜早朝時間帯3万回の計6万回の発着枠が国際線に割りあてられた。昼間時間帯はアジア近距離のビジネス路線、深夜早朝時間帯は欧米を含む主要都市路線への配分が決まっている。定期チャーター便という位置づけだったソウル(金浦)、上海(虹橋)、北京、香港の各便も完全定期便化。「羽田=国内拠点空港」「成田=国際拠点空港」と役割分担を明確化してきた航空政策が、実質的に大きな転換点を迎えたことになる。航空・旅行業界がビジネスチャンスと捉え、新たな取り組みを積極的に進めているなか、いま一度、その拡張の概要をおさえておこう。
>羽田空港拡張の展望
>成田空港、首都圏空港として羽田空港と共存
>完全オープンスカイでハブ空港の競争激化必至
>仁川空港も拡張プロジェクト、さらにハブ機能強化へ
羽田空港拡張の展望
国土交通省は新たに策定した成長戦略のなかで、航空分野の重点項目として、徹底的なオープンスカイの推進とともに、羽田空港の24時間国際拠点空港化を明記した。国家プロジェクトである訪日外国人拡大も視野に入れつつ、将来の航空需要増大に対応する取り組みとして羽田空港の機能強化を重視し、「旺盛な首都圏の国際航空需要に対応するとともに、同空港の充実した国内線ネットワークを活用した内・際ハブ機能を強化する」と明記している。
羽田空港では今年10月の時点で、前述の国際線割当分を含め、全体の発着回数は昼間(午前6時00分~午後11時00分)33.1万回、深夜早朝(午後11時 00分~午前6時00分)4万回に増え、2011年度中には昼間35万回、深夜早朝4万回の発着枠が可能になる(昼間1.9万回の増枠はすべて国内線ですでに配分済み)。さらに、2013年度中には、昼間40.7万回、深夜早朝4万回まで拡大する予定だ。
将来的な羽田空港の国内・国際間配分の考え方について、政府は昼間時間帯については「アジア近距離ビジネス路線に限定」としている現在のルールを廃止し、アジア長距離路線、欧米路線も含めた「高需要、ビジネス路線」にも枠を広げていく方針を打ち出している。この基本的な考え方に基づき、2013年度の増枠では昼間時間帯の増枠分5.7万回のうち、半分強にあたる3万回の発着枠を国際線に配分し、計9万回(昼間時間帯6万回+深夜早朝時間帯3万回)とする方針だ。現時点から計算すると、合計14.4万回の増枠のうち9万回が国際線に割りあてられることになり、国際拠点空港としての機能が拡充されることになる。
今年10月の国際線増枠は時間帯、路線とも限定的で、国際拠点空港といえるにはまだほど遠いのが現状。航空・旅行業界とも羽田国際化に対しては手探りの状況が続く。しかし、昼間時間帯が6万回にまで拡大される2013年度には、さらに柔軟な路線展開、スケジュール設定が可能になり、それにともなって幅広い旅行商品の造成も可能になることから、「大交流時代」に向けたビジネス競争がさらに活発になるのは必至だ。