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星に導かれ旅する人が作った楽園-ハワイの歴史(1)

ハワイ州誕生50周年記念特集 ハワイの歴史 第1回
火山と「星に導かれて旅する人々」が作った楽園

 1225_top.jpg ハワイがアメリカ合衆国の50番目の州となってから、2009年は50年目の節目の年を迎える。ハワイには、3000万年以上前から脈々と続く大自然、それに育まれた人類の歴史を感じられるスポットがあり、「州」となった50年の間にも刻々と変化しつづけ、魅力を増している。ハワイの「州」誕生50周年を記念し、ハワイの歴史を「観光」の視点から、豊かな自然環境や文化をおりまぜ、5回にわたって特集する。ハワイへの旅の提案や企画に活かしていただきたい。(文:宮田麻未)

 

4000キロの旅をした人々 

1225_01.jpg 大きな8つの島と130近くある小島や岩礁からなるハワイ諸島が誕生したのは、約3000万年舞えと考えられている。ハワイ諸島の最北西にあるクレ環礁が、地球の奥深くにあるホットスポット(マグマ溜まり)から噴出した溶岩によって形成されたのが、その始まりだ。ハワイ6島の中ではカウアイ島が一番古く、約500万年前に生まれた。現在も活発に火山活動が続いているビッグ・アイランド(ハワイ島)は約100万年前に生まれたと考えられている。

 真っ赤に燃える溶岩が静まって大地となり、そこに動植物が生育できるまで、何百万年もの年月がかかった。ハワイ諸島に最初に人間が住み着くようになったのは、日本で聖徳太子が活躍したとされる時代の紀元500年から700年の間であったと推定される。この人々は、南太平洋のマルケサス諸島からやって来たポリネシア人と考えられている。マルケサス諸島からハワイまでは、およそ3500キロ。太陽や星で位置を測り、風の波だけを頼って、海上を旅して来たのだ。ハワイの神話に登場する、小柄ながら強靱な肉体と意思を誇った「メネフネ族」と呼ばれる人々が、この最初の移住者だったという説が有力だ。さらに12世紀になると、4000キロにあるタヒチから多くの人々がやって来て、ハワイの各島に分散。大規模な神殿や潅漑施設、養魚場まで作り、タロイモなどを中心とした農業の基盤を整えたという。

 先史時代の移住者たちは文字を持たず、口承伝説や絵、舞踊(フラ)などで習慣や文化を継承していた。ハワイ各地に残されているペトログリフと呼ばれる線刻岩絵もその一つだ。例えば、コハラ・コーストにあるワイコロア・ビーチ・リゾートの周辺には、雄大な溶岩原のあちこちに驚くほど多様でユニークな意匠、パワフルなメッセージが刻み込まれたペトログリフが点在している。多様な絵の中に、亀などの動物、狩りをする人間の姿にまじって、大きな双胴船があり、船の周辺には星座と見られる絵も刻まれている。スターナビゲーション(星座を基準にした航海術)で、壮大なスケールの旅をした先史時代の人々の思い出が刻まれているのだろう。素朴な線画だが、見る人の心を強く揺さぶるメッセージが感じられる。

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 「地球の鼓動」を体感する 

 1225_03.jpg ハワイ諸島最大の島、ビッグ・アイランドは、世界で最も活発な火山活動が観測されている場所だ。とりわけ島の南東端にあるキラウエア火山(標高1247メートル)は20世紀以降、50回近い噴火が記録されており、今もときおり海に向かって真っ赤な溶岩が流れ落ちる。山域はハワイ火山国立公園に指定され、1987年にはユネスコの世界遺産にもなっている。ちなみに、キラウエア火山のハレマウマウ火口には、ハワイの伝説の中で最も有名な火の女神ペレが住んでいると信じられている。ペレは、出会ったすべての男性を魅了してしまうほどの美女でありながら、極めて身勝手で凶暴な性格でもあるという。火山の心奪われるような美しさと、その強大で危険なパワーへの畏怖心が、そのまま「ペレ」として神格化されたと思わせる強いロマンを感じる神話だ。また、の中央部にそびえ、世界で最も天体観測に適した場所とされる標高4205メートルのマウナケアも活火山だ。日没と星の観察を組み合わせたツアーは、ハワイ観光の中でも最も人気のあるものの一つだろう。

 大自然の膨大な力を見せ付ける火山を、ハワイの人々が神の姿そのものとして崇拝し、大切にしてきたことは当然といえる。火山の周辺にはしばしばヘイアウ(古代ハワイ人が作った聖域)が残されており、最近はハワイを「スピリチュアルなディスティネーション」としてとらえ、心の旅、癒しの旅を求めている人も増えてきた。そうした人々に注目されている「パワースポット」の多くが、火山と深いつながりがある。

 例えば、マウイ島のハレアカラは3000メートル級の世界最大の休火山だ。この火山のクレーター周辺をめぐるトレイルを歩けば、かつての火山活動の激しさとスケールの大きさを体感できる。映画『2001年宇宙の旅』のロケ地として選ばれたのも、この地球とは思えない景色のためだろう。ハレアカラとは「太陽の家」を意味する。古代ハワイの伝説で活躍する半神半人のマウイが、一日を長くするためにこの山に太陽を閉じこめたのだといわれている。この太陽を抱く山のパワーを最も感じられるのは、頂上から日の出を眺めるときだろう。

 

独自の文化が形成した自然循環社会 

1225_04.jpg 12世紀初頭にタヒチから人々がやって来た後、ハワイは600年近く外界との接触が途絶えていた。他のポリネシア周辺から人が来なくなった理由は、歴史学でも定説がない。1778年に英国のジェームス・クックに「発見」されるまで、ハワイはポリネシア文化を基礎にしながら、独自の文化を育んでいた。

 

 大自然の森羅万象に神がやどる信仰は、創造神「カネ」、収穫を司る「ロノ」、戦の神「クー」、そして海と闇の世界を司る神「カナロア」の四大神を中心に、複雑な構造を持つ伝説を生み出していった。人々は神聖な場所や身近にヘイアウを築き、神々に祈りを捧げ、フラを踊って霊力の恩恵にあずかろうとした。ビッグ・アイランドのプウホヌア・オ・ホナウナウ国立公園のように、巨大なヘイアウの跡が残されている場所はハワイ各地にあり、今もパワースポットとして神聖視されている。また、ホエールウォッチングや美しい灯台で人気のあるオアフ島のマカプウ岬には、へ移る前に、火の女神ペレが一休みした「椅子」といわれる岩があり、古代ハワイアンの信仰の場としても注目したい。

 古代ハワイ文化として注目したいもう一つのポイントは「サスティナビリティ」だろう。人々は早期から、島々の自然が持続可能となる生活形態を築いてきた。その維持ために、マナと呼ばれる神聖な力を畏怖し、カプ(禁忌)が細かく定められた。例えば、ロコと呼ばれる一種の養魚場を作ったり、飲料水の確保に欠かすことができない渓流を保護するために上流部への立ち入りを禁止したり、王族が使う鳥の羽も、鳥を殺さないように一羽から数本ずつ採取したなど、エコロジー的な知恵に満ちた慣習が幾つもあった。自然の恵みを尊び、すべてのものを大地や海に返すことで、再び恵みを受けることができると信じていたのだ。1819年にカプは廃止されたが、ハワイの人々の心には、今も自然を大切にする思いが強く残っている。「マナとエコ」は、ハワイで新しい関心をひくテーマのひとつになりそうだ。

 

 ハワイ諸島は「兄弟」島、地球の鼓動を体感できる稀有な場所 

1225_05.jpg 太平洋の真ん中に、およそ2560キロメートルに渡り広がるハワイ諸島は、大きな8つの島と130近くある小島や岩礁からなる。これらの島々は太古から現在まで続く、壮大な火山活動から生まれた。ハワイ諸島の最北西にあるクレ環礁が、地球の奥深くにあるホットスポット(マグマ溜まり)から噴出した溶岩によって形成されたのは、約3000万年前だと考えられている。ホットスポットの位置はほとんど変わらないが、ハワイ諸島の下にある太平洋プレート(地球の表面を覆う岩盤)は、1年に約8センチメートルずつ北西方向に移動していることから、海底火山の噴出のたびに、東側に新しい島が次々と生まれたことになる。

 ハワイ諸島がほぼ一列に並んでいるのはこの火山活動によるもので、地質的にも「兄弟」島といえるだろう。ハワイ6島の中ではカウアイ島が一番古く、約500万年前に生まれた。現在も活発に火山活動が続いているビッグ・アイランドは約100万年前に生まれたと考えられている。
さらに、ビッグ・アイランドの東の海底には、すでに「ロイヒ」と呼ばれる海底火山が海面下969メートルまで隆起しており、数万年後は陸地として海面に現れる可能性もある。ハワイはまさに「生きて」いる。地球の鼓動を地上で直接、体感することができる希有の場所である。

 

写真:ハワイ州観光局、神尾明

 

▽ハワイ50選
 ハワイ州誕生50周年にあわせ、ハワイ州観光局(HTJ)は日本やハワイの旅行業関係者とともに、自然や歴史文化などハワイならではの50のポイントを「ハワイ50選」としてピックアップ。その魅力や楽しみ方を提案しています。トラベルビジョンのハワイ特集では、記事で触れた「ハワイ50選」を下記に抜き出していきます。 

今週のハワイ50選

コハラ・コースト(ビッグ・アイランド)
マウナケア(ビッグ・アイランド)
ハレアカラ(マウイ島)
プウホヌア・オ・ホナウナウ国立公園(ビッグ・アイランド)
マカプウ岬(オアフ島)