今が旬!ハワイのホエールウォッチング
ハワイ・ライフ&カルチャー 今が旬!ハワイのホエールウォッチング
~旅行の計画にシーズンならではの遊びをプラス~
常夏の楽園であり、通年、ビーチやショッピングなど楽しみ満載のハワイ。しかしハワイといえども、やはりシーズン限定の楽しみというものが存在する。たとえば冬から春の期間なら、オアフ島ノースショアでのプロのサーフィン大会や、ホエールウォッチングなどがその好例だ。こういったシーズンごとの遊びを核にハワイ休暇の計画を立てるのは、ヘビーリピーターにとっては今や常識といえる。おりしもハワイは今、ホエールウォッチング・シーズンの真っ最中。今回は、ハワイとクジラの関わりや楽しみ方を中心に紹介したい。
クジラ到来のニュースは冬の訪れ
日本をはじめ世界中に生息するクジラのうち、今の季節にハワイで見られるのは主にザトウクジラ。夏場、餌の豊かなアラスカの海で過ごしたザトウクジラは冬、交尾や出産のため遥かなるハワイに大移動する。水温の低いアラスカの海は、生まれたばかりの赤ちゃんクジラにとっては生存に影響するリスクがあるためだ。ハワイに来訪するクジラの数は、推定で6000頭から8000頭といわれる。
クジラの到来を待ち望むのは、外部からの観光客ばかりではない。ハワイ在住者にとっても冬のクジラの来訪は嬉しいビッグニュース。毎年、10月に入ると「今年初めてのザトウクジラ発見」といったニュースが、メディアを賑わせる。たとえば昨年、初めてのクジラがマウイ沖で発見されたのが10月8日。2007年は10月9日。けっして大きな記事ではないが、こうしたクジラ到来のニュースは地元紙やテレビニュースで報道され、ハワイの人々は冬の訪れを知ることになる。日本でいうと、ちょうど「春一番が吹いた」「桜が開花した」といった季節感のあるニュースといったら、わかりやすいだろうか。
この時期、ハワイ各島の海岸線からクジラを見ることができ、車で遠出をするたび、展望台で双眼鏡を片手にクジラを探す人々を見かけたりも。またクジラの季節のピークを迎える1月や2月は、ハワイ各島の多数のポイントで一斉にクジラを数えるボランティアが募集されたりして、クジラ・モードを盛り上げてくれるのだ。
11月から4月、ハワイ各地で大いなるクジラ発見のチャンス
ハワイのホエールウォッチングというと、マウイ島でしか楽しめないような印象があるが、実際はどの島でもクジラを見ることができる。オアフ島でも、シーズン中には数種類ものホエールウォッチング・クルーズが出航し、連日賑わっている。
たとえば1500人収容のクルーズ船「スター・オブ・ホノルル号」でも、12月15日から4月30日までの毎日、ホエールウォッチング・クルーズを実施しており、人気が高い。船には高さ18メートルの展望デッキがあるほか、クルーズにはナチュラリストの資格を持つスタッフも乗船。あわせてクジラの生態についてのナレーションやビデオ上映もあり、クジラを探す楽しみだけでなく、クジラについて総合的に学べるツアーとなっている。
また、海岸沿いの展望台など、海を見張らせる高台はこの時期、どこでもホエールウォッチングのポイントにはや変わり。たとえばオアフ島なら、ダイヤモンドヘッド付近やハナウマ湾近くの展望台などなど。ノースショアのワイメア湾の崖上やモクレイアビーチから、ジャンプするクジラを見たこともある。船から見るのとは違って間近にクジラが見られるわけではないが、それでも大いなる海の"巨人"クジラを肉眼で見れば、誰でも感動するはずだ。
変わったところでは、空中からクジラを見つけるという手もある。実は数年前、セスナ体験操縦のツアーでノースショア上空を飛んでいた際、親子らしき3頭のクジラを発見。このときのパイロットによると、冬のノースショア上空からは、ほぼ毎日クジラを見つけることができるということだった。
オアフ島のクジラ見学のメッカ、マカプウ岬
オアフ島でクルーズ船以外でのクジラ見学のメッカとしては、マカプウ岬のトレイル「マカプウ・ライトハウス・トレイル」が有名だ。ハナウマ湾から車でさらに10分ほど行った先にあるトレイルで、終点の灯台近くまで舗装道路が続いている。
片道は約40分だが、途中ホエールウォッチングに絶好の高台があり、そこにはクジラの生態を示すパネルや、親切に望遠鏡までが設置されている。もちろんクジラを発見できるかどうかは時の運だが、前回出かけた際はすぐ近くにクジラの群がおり、クジラの吹く潮や尾びれが意外に近く見えた。しかも、尾びれが海面に叩きつけられる"タプン、タプン"という音までが聞こえ、まさに臨場感たっぷりのクジラ体験だった。
このトレイルへは、ワイキキからならH-1フリーウェイ経由で約40分のドライブ。カラニアナオレ・ハイウェイに入ってハナウマ湾を過ぎ、約10分で到着する。右手にある広い駐車場への入口が目印だ。本来は灯台を管理する沿岸警備隊のために作られた道路なので、ベビーカーでも行くことができる。家族連れでも安心して訪問できるのがいい。
とにかくシーズン中は「どこそこに行かなければクジラは見えない」という先入観を捨て、ドライブ中、気ままに車を止め、クジラを探してみてほしい。
▽スター・オブ・ホノルル
http://www.starofhonolulu.com/
実はハワイの古代史、文化の中において、クジラの軌跡はそれほど大きくない。クジラはハワイ語で「KOHOLA」、コホラと呼ばれ、ハワイ4大神のひとりのカナロアの化身とされているものの、そのほかクジラの伝説・神話はほとんどないのである。ハワイ文化の中でクジラの影はごく薄いのだ。海の大型生物では鮫がハワイ文化で重要視され、鮫の神の逸話や神像が多く残されているのとは対照的だ。私自身、ハワイで鮫の神の像はたくさん見たことがあるがクジラの神像など、ついぞ見たことがない。
これはいったい、どういうことなのだろうか。以前マウイ島在住のハワイ文化の大家に聞いてみると、その説明はまさに的をつくものだった。クジラはハワイの人々にとって、古来、冬期しか到来しないビジター。ハワイの海にとってクジラは、今も昔もお客さんなのだ。そのためハワイ最大の生物でありながらも、ハワイの人々はクジラに重きを置かなかったという。ハワイの人々にとって生活共同体の一部であり、同時に年中、人々の命を脅かしていた鮫が恐れられ、神として崇められたのとは、大違いだったわけだ。
もっとも浜辺にクジラが打ち上げられれば、珍重され、王族の所有となったという。特に活用されたのは歯。10センチから25センチもあるクジラの歯は加工され、レイ・ニホ・パラオアと呼ばれるネックレスになった。このネックレスは王族だけが付けることができた装飾品であり、王族の象徴でもあった。たとえばホノルルのダウンタウンにあるリリウオカラニ女王像も、レイ・ニホ・パラオアを付けている。
もしもクジラがハワイ文化の中でもっと畏怖され、崇められる存在だったなら。19世紀に、マウイ島のラハイナが捕鯨船基地になり、ハワイの海でクジラが乱獲されることもなかったはずだ。ラハイナの歴史や町並みも、ずいぶん違ったものになっていたのではないだろうか。今回、ハワイとクジラの関わりについて振り返りながら、そんなことを考えた。
ダイヤモンドヘッド(オアフ島)
ハナウマ湾(オアフ島)
ノースショア(オアフ島)
マカプウ岬(オアフ島)
ワイキキ(オアフ島)
ラハイナ(マウイ島)