ハワイ・リピーターが行き着くロングステイ
ライフ&カルチャー:シニアから親子留学まで幅広い層が実践
~ロングステイの魅力と需要にひそむハワイ旅行の新たな可能性~
海外旅行の好きな人はハワイにはじまり、ハワイに終わるといわれることも多い。観光で4泊6日、5泊7日と駆け足で回るハワイではなく、1ヶ月以上滞在したいみたいと願い、それをロングステイという形で実践している人の多くが、ハワイ旅行のリピーターによって占められている。ロングステイ財団のアンケート調査「ロングステイ調査統計2008」によると、ロングステイの希望期間は1ヶ月から3ヶ月未満が45%と半数近くを占める一方で、6ヶ月から1年は8%程度であり、より手軽なロングステイが主流になりつつあるのは確か。将来の長期滞在を見込んだ視察・体験旅行をはじめ、趣味や稽古の延長としてのハワイ暮らしなど、ロングステイの潜在需要に結びつくヒントも少なくないはずだ。
ワイキキ周辺に1ヶ月から1ヶ月半滞在が主流
地理的に日本からさほど遠くなく、温暖な気候、空気がよく、人々が朗らかといった理由から、ロングステイの滞在先としてハワイを選ぶ日本人が多いという。旅慣れた人がヨーロッパ、アメリカのその他の都市、南アメリカ、アジアと旅行をした後、ハワイでのロングステイを選ぶには、それなりの訳がある。ハワイは白人、日系人、アジア系など多様な人種がともに暮らしている。どの人種もマジョリティではなくマイノリティの集まりといった、アメリカでも独特の州という背景からか、人々はお互いを思いやり、観光客にも優しい。アロハスピリットという言葉をよく耳にする通り、ワイキキのような都会であっても、人の優しさを感じることができるのが魅力であり、ロングステイではそれを実感する場面が多いだろう。
ハワイの滞在サポートサービスを24時間体制で提供しているロングステイサービスハワイの社長である三田英郎氏は、「自営業、団塊の世代やシニア層などの退職者や40代から50代の語学留学、親子留学など、幅広い層がロングステイを実践している」と語る。利用者のほとんどがワイキキ周辺のコンドミニアムを希望し、1ヶ月から1ヶ月半ほど滞在するケースが多い。高級志向の人たちであれば月額4000ドルから1万ドルのコンドミニアムを利用することが多く、お気に入りのコンドミニアムを指定する人も少なくない。一方、低価格志向の人たちは月額1500から2000ドルで、ワンルーム・タイプのアパートを利用する。高級コンドミニアムとしては、ホクア、ハワイキタワー、ナウルタワー、カハラビーチアパートメントの人気が高く、全般に月額3000ドル前後の滞在先を選ぶ人たちが大半を占めているのが現状だ。
生活のパターンづくりのアドバイスを実施
ハワイは、特にワイキキ周辺などは外国ではあっても、日本人が観光や通常の生活をする分には不便があまりない。しかし、急な病気や事故、銀行や医療など複雑な状況になると、英語のハンディを感じる日本人は多い。ロングステイサービス社はこのような要望に応えることを目的に、2008年8月にオープンした。「日本と同じような気持ちで生活できることを理想に、言葉が壁になっていた様々なことの入り口を開くお手伝いをしている」と三田氏。
また、団塊の世代やシニア層の人は、今までがむしゃらに働いてきた人が多く、急にのんびり、ゆっくりといっても、かえってそれがストレスになってしまう傾向も見られる。そうならないために、ボートの好きな人には係留地を探すなど、日本で趣味として親しんでいることをハワイでも体験できるようにしたり、あるいはビジネスについて考えるきっかけづくりをする。毎日をイキイキと過ごせるように、生活のパターンを作っていくなどのアドバイスもしている。
ハワイで、医療、語学学校、携帯電話会社紹介からゴルフ場、レストランの予約まで、あらゆる会員のリクエストに24時間体制で対応するサービスを提供するのは、ロングステイサービスが初めて。月会費は300ドル必要だが、短期滞在者向けに1日15ドルからというサービスもスタート。1日からでも対応するので、長期滞在の下見ツアーはもちろん、将来、ロングステイを考える顧客の旅行のオプショナルとしても利用できるだろう。
ロングステイに欠かせない友人作り
「ロングステイを楽しむ、もうひとつの大きな要素は友人やヨコのつながり」とNPO法人のハワイシニアライフ協会を設立した同協会会長兼代表の坂井諒三氏は話す。同法人は2007年9月に設立、現在会員数は600人を超えており、会員の3割近くは地元の人が占めている。毎週金曜には"シニア・フライデー"と題し、プライベートヨットクラブでのおしゃべり会や、ゴルフで楽しむ会を開催し、友人の輪を広げる機会を提供している。
「少し前までは、日本の家を手放して本格的に移住する人が多かったが、これからは、日本とハワイの2つの都市で生活する、2ヶ所居住型が本当の幸せなのかもしれない」と坂井氏。「世界には季節ごとに素晴らしい都市がたくさんあるが、ハワイはどの時期を選んでも平均的に満足度が高い」とは続ける。「以前は滞在費用の高さがネックだったが最近は少しずつ不動産の値段が下がり、コンドミニアムなどの賃貸料も同様に下落傾向にある。これをきっかけに、ハワイでのロングステイを希望する人が増加していけばと思う。そのためにも、今は景気がよくなくてもローカルの情報を発信し続けていきたい」と意欲的だ。移住ではなく、好きな時にハワイに長期滞在、一方で日本での生活基盤も大切にする、そんなデュアルライフを楽しむシニア層の増加を核に、ハワイでのロングステイの裾野は今後も広がりそうだ。
※参考情報
ハワイ州観光局(HTJ)が日本市場でプロモートするロングステイの定義は、「観光の範囲内でおこなう長期滞在」としており、「ノービザで滞在できる90日間以内の長期滞在」
ロングステイヤーに聞く
ハワイで2度目となる1ヶ月半のロングステイを体験中
久代浩徳さん(71歳)/律子さん(67歳)
ご夫妻 千葉在住
ニュージーランドのクライストチャーチ、タイのバンコクやチェンマイ、ロサンゼルス郊外のアーバインなどを観光でまわりながら、長期滞在の場所を探し続けました。「ハワイがいい」という人が多いので敬遠していたものの、実際に来てみると、気候のよさや人のよさなど、すっかりハワイのファンになりました。市バスが月額5ドルで乗り放題なので(65歳以上が対象のシニアカードパス<4年間有効:10米ドル>の所持者が購入できる)、どこへ行くにも市バスを利用し、車も必要ありません。40日間の滞在がもうすぐ終了となりますが、退屈だと思った日は1日もなく、卓球、ダンス、ハイキングと日々充実していました。来年はもう少し長く滞在したいですね。
学生ビザでハワイに来訪、通算1年半滞在
金田栄さん(69歳)横浜在住
自営の会社経営が一段落し、療養をかねてハワイにやってきました。朝9時から午後2時半までの英語の語学学校への通学が基本ですが、この他に地元の高校のアダルトスクールでのウクレレレッスン、ゴルフやシニアライフ協会主催のイベント等に参加して、ゆったりしたペースですが、それなりに充実した日々を過ごしています。短期の旅行と違って、精神的にも、肉体的にもゆとりを持って生活できるのが、ロングステイのよい点です。これから車の免許の取得も考えています。
▽ロングステイサービスハワイ
http://www.longstayservice-hawaii.com/
▽ハワイシニアライフ協会
http://www.hawaiiseniorlife.org/
ワイキキ(オアフ島)