アロハシャツ工場とヴィンテージショップを訪問
2009年2月 5日
ハワイ体験レポート 装いで感じるアロハ・スピリット
~アロハシャツ工場とヴィンテージショップ訪問~
立州50周年にちなみ、ハワイの観光関係者が「ハワイだから出会える特別なもの」を念頭に選出した「ハワイ50選」には、「アロハをまとう」も取り上げられた。ハワイの自然や文化がデザインに反映されたアロハシャツ、ムームー、ハワイアンジュエリーなどのハワイアンウェアは、購入する楽しみもさることながら、身につけるだけでリゾート気分が高まり、ハワイ旅行を一段と味わい深いものにしてくれる。今回はアロハシャツを引き合いに、ファッション以上の「アロハをまとう」楽しみ方を提案したい。
カパフル通りへ足を伸ばし、有名ヴィンテージショップへ
カラカウア通りを行く日本からの旅行者に話を聞くと、「ハワイは3度目。来るたびにアロハシャツのデザインと快適さに興味が高まる」(熟年世代の男性)や、「今着ているムームーは、5年前にビッグ・アイランドで購入したもの。それ以降、その店を訪れるのが楽しみになり、今回も行く予定」(30代女性)と、単に購入するだけでなく、ハワイアンウェアに触れることが旅行目的のひとつになっていることがうかがえる。多々あるユニークなショップを訪れ、特徴の違いを感じるような旅行も受け入れられるかもしれない。
今回訪れたのは、ハワイ随一のヴィンテージの品揃えを誇るという「ベイリーズ・アンティーク&アロハシャツ」。カパフル通りに建ち、アメリカのオバマ新大統領が10代の頃にお気に入りだったランチプレートがある「レインボー・ドライブ・イン」と「ジッピーズ」の間にある。
木製の色鮮やかなドアを開けると、店内に陳列するアロハシャツやヴィンテージの小物が目に飛び込んでくる。窓ガラスまでもアロハシャツで占められているため、室内はうっすらとほの暗い。しかし、シャツの色やデザインの豊富さが、鮮やかで躍動的な印象を与えてくれる。
博物館のようなバラエティに注目
ベイリーズでは1万5000着以上ものシャツを扱い、「USED(中古)」、アンティークのレプリカの「NEW(新製品)」、「VINTAGE(ヴィンテージ)」、有名ブランドのもので入手困難な「SPECIALITIES(特別品)」の4つに分けている。特にSPECIALITIESのシャツは、ほとんどが天井から吊るされており、博物館でアートを鑑賞しているような雰囲気になる。
また、長袖のアロハシャツのコレクションやヨーロッパ調のデザインのムームーのほか、家具、人形、食器、ポストカードなどのアンティーク小物もアロハシャツの狭間に並ぶ。アメリカ本土、中国などのアロハシャツのコレクションがある中、和風柄のアロハシャツは最も多く、鮮明でエキゾチックなデザインと高品質な素材にファンが多いという。また、シャツの裏側のタグで、ブランド・ロゴの変遷が見られることも興味深い。
冬の寒さが厳しいミシガン州が出身という店主のベイリー氏は当初、「とにかく気候にめぐまれている」ということでハワイでの生活を選んだ。しかし今ではデザインの影響からか、日本から鯉を取り寄せて自宅で飼おうと計画するなど、アロハシャツやハワイの文化が生活に入り込み、愛着が感じられる。そんな話をしながらも、小物の配置や証明の確認などにも気を配る様子から、店や商品に対する思い入れの強さがうかがえる。
ベイリー氏はハワイの楽しみ方として、ワイキキから同店舗が建つカパフル通りにも足を伸ばし、行動範囲を広めてみてはと提案。点在するアンティーク・ショップや現地の人々に親しまれている飲食店などを含めた、ローカルなハワイに触れる気軽な観光が楽しめそうだ。
「イオラニ」はハワイでも歴史あるアロハシャツ、ムームーのブランドのひとつで、創業は1953年。日系2世のケイジ・カワカミさん、エディス・カワカミさん夫妻が、オアフ島のベレタニア通りにあったガソリン・スタンドの後ろで、4台の機械と7人の従業員の小規模な製作所としてスタートしたメーカーだ。現在もオフィスに足を運ぶエディスさんは、今年87歳。広島県に祖先と親戚があり、日本への思いが強いからか、工場内を日本語で案内をしてくださる対応は、温かく、優しい。
日系2世がはじめたアロハシャツ工場
イオラニの工場で作るアロハシャツは、素材の品質の良さ、自然、文化、歴史を施したデザインが地元住民のみならず、旅行者にも支持を受け、かつては3つの工場、200名の従業員を抱える規模にまで拡大したという。
工場へ入ると、仕上がった製品が陳列されている。ハワイのデパートなどで販売されている、おなじみのものだ。少し進むと、これから仕立てられる布地が鮮やかな巻絵のようにひしめきあい、その数に圧倒される。総じてアロハシャツのデザインは、ハワイらしい「トロピカル系」と、移民の文化の影響を受けた「オリエンタル系」があるが、イオラニではこれらに加え、モンステラに月下美人をあしらったもの、極楽鳥花が踊るように描かれているもの、ハイビスカスと竹を調和させた「トロピカルでオリエンタルな」柄などが代表的なデザインだ。
作り手の姿にアロハ・スピリットを見る
製作現場に歩を進めると、これらの布地を料理すべく、確かめながら型紙を採寸してゆく職人、ミシンをあてがう職人たちの仕事ぶりには、声をかけることも躊躇するほどの真剣な空気が漂う。一つ一つに真剣に向きあい、心を込めている気持ちが伝わってくる。同ブランドはハワイ州、ホノルル市、その他の団体からハワイ文化への貢献に対して、数々の功労を受けているのも、こうした思いの積み重ねなのだろう。工場に併設するオフィスにはその書面が数多く掲示されている。
イオラニの工場見学は現在、現地ツアーを含めて商品化されているわけではない。しかし、イオラニでは工場訪問とショッピングについて問い合わせベースで対応することも可能だという。「見る」「聞く」の楽しみを加えた、ショップや工場訪問。そこで働く人々の思いに触れ、話を聞くことで、普段のアロハウェアの見方が変わるだろう。自然、歴史と人々の心を感じる「アロハをまとう」体験となるはずだ。
▽ベイリーズ・アロハシャツ&アンティーク
▽イオラニ
▽主なアロハシャツ、ムームー・メーカー
・レインズ トラディショナルで整然としたデザインが定評
・シグ・ゼーン ハワイ独自の植物を模した斬新なデザインにファンも多い
・トリ・リチャード 重厚なイメージの店頭ではアジア風のデザインの製品も多く並ぶ
・プリンセス・カイウラニ・ファッションズ ムームーの老舗ブランド。オーダーメードのウェディングドレス手配が可能
・マヌヘアリイ 比較的新しいブランド。着やすさとデザインの鮮やかさが人気
今週のハワイ50選
アロハをまとう(ハワイ全島)
アロハをまとう(ハワイ全島)
取材:フジタ佳子