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ボイス・フロム・ハワイ:エコ・教育旅行のPIIのロックウッド氏

若者中心にボランティアや体験教育の関心高まる
広がりをみせるハワイのエコツアー

100204hwi_top.jpg  米本土からの旅行者を中心に、近年、ハワイで関心が高まっているのがエコやネイチャーをテーマにした体験教育ツアー。最近ではボランティア体験ができる ツアーにも、注目が集まっています。今回はエコや教育ツアーを手がけて30年以上の実績を持つ、元祖エコツアー会社的存在のパシフィック・アイランド・イ ンスティチュート(PII)CEOであるアンドリュー・ロックウッド氏に、最近の傾向を聞きました。今後の教育旅行や体験型旅行のヒントにもなりそうで す。


パシフィック・アイランド・インスティチュート(PII)
CEO アンドリュー・ロックウッド氏



Q.会社設立までの経緯と、御社の特徴を教えてください

100204hwi_01.jpg   私の先代がハワイ・ロア・カレッジ(現ハワイパシフィック大学)内で、シニア対象の宿泊型生涯学習を提供するエルダー・ホステル協会のプログラムを担当し ていたことがきっかけでした。その後、同協会の55歳以上を対象にした教育ツアープログラムを独立して引き受けることになり、少しずつ顧客を増やして、今 では35年の実績をもつ会社となりました。

長い経験に基づいて、教育、エコ、カルチャー、自然に幅広い人脈を持っているのが当社の強みです。一番のポイントは、それぞれの分野の専門家がツアーに同行して解説をすることで、例えば溶岩のツアーにはキラウエアの 溶岩の研究者、海洋生物観察では海洋生物学の教授、天文に関わるツアーの場合、ハワイ大学で天文学を研究している教授や博士を同行させるといった具合で す。これは「現地に住む専門家が説明することが何より大切」と考えているためで、ツアー参加者にとって、各分野のエキスパートから学ぶことはリアルであ り、またとない教育体験となります。



Q.ツアーに申し込む人は、どんな客層が多いのでしょう

 当社のツアーは定番のプランが少なく、ほとんどがリクエストベースです。参加者は家族3世代でのハワイ旅行から、高校生の修学旅行、そしてシニア層、学校 の先生の団体など多岐にわたっています。また、ワシントンDCのスミソニアン博物館の館員、ナショナル・ワイルドライフ・フェデレーション、国立公園保護 協会などから依頼を受け、ハワイの天文学や国立公園についての教育ツアーを企画するケースもあります。そのため、最低でも1ヶ月前からリクエストを聞きな がら作っていく、オリジナルツアーが中心です。こうした業績に対し、2006年にはハワイ・ツーリズム・オーソリティ(HTA)が長年にわたって文化へ貢 献した人に贈る賞を、2007年にはハワイエコツーリズム協会からハワイ・エコツアー・オペレーター・オブ・ザ・イヤーを受賞しました。



Q.最近のツアーの傾向を教えてください

100204hwi_02.jpg  アメリカ人旅行者の場合、ボランティア型の体験ツアーに人気が集まってきています。例えば、パールハーバーに記念艦として保存されているUSSミズーリ艦 では、7日間の日程で戦艦のチーク材のデッキをボランティアで直します。同ツアーでは1泊ですが戦艦内で宿泊できるほか、通常は入場不可としているところ まで見学できる点が人気を集めています。料金はホテル宿泊を含め1457米ドルからと決して安くはないのですが、いくつもの戦場を体験し、太平洋戦争で日 本の降伏文書調印式場となった有名な戦艦の修復作業に参加したいという人は少なくありません。



Q.ボランティアツアーの人気の理由はどこにあるのでしょう

 ボランティア、つまりコミュニティサービスツアーが注目される理由について私が感じるのは、時代の違いですね。今の若い世代は小さいころから、環境破壊あ るいはサスティナビリティなどを勉強していますから、地域や世界の環境に対する責任の感じ方が違います。事実、若い世代ほど、ボランティアに熱心な傾向が みられます。



Q.日本からの旅行者でも気軽に参加できる日程のツアーもあるのでしょうか

100204hwi_03.jpg  1日だけで参加できるツアーも、もちろんアレンジ可能です。オアフだけでなく隣島でも実施できるものとして、泥の沼地で泥まみれになりながら、タロイモの 畑を作っていくボランティアツアーがあり、これが結構人気があります。泥で汚れた体をすぐそばにある小川で洗い流すのも、参加者の多くを占める若者にとっ て新鮮な体験のようです。他にもハワイ固有の植物の保護や、他の野生動物から野鳥の巣を守る活動をするツアーなど、さまざまなツアーをアレンジしています。



Q.このほかに、体験ツアーのテーマはどんなものがありますか

 ハワイの自然を守っていくという意味でのボランティアツアーと人気を二分しているのが、教育でもカルチャーでも実際に体験するツアーです。文化という面でも、ハワイは興味深い素材が豊富です。

 例えば、タパと呼ばれる樹皮でできた布を作る体験、それにフラやハワイアンミュージックなど、ハワイの昔から受け継がれている伝統的な文化をもっと知って もらいたいですね。また、ホエールウォッチングの季節の1月から3月なら、ザトウクジラのほかイルカやマンタ、亀、熱帯魚、珊瑚礁など海洋環境の理解を深 めるのもよいでしょう。1850年代にハワイでハンセン病が流行した時、モロカイ島のカラウパパに隔離をされていた患者の心のケアに生涯を捧げたダミアン神父の足跡をたどるツアーなど、奥深いハワイを知る機会になるテーマはそれこそ無数にあります。



Q.日本の旅行会社からツアーの問いあわせはありますか

100204hwi_04.jpg  当社では年間150件ほどのツアーを企画しており、そのほとんどがハワイとアメリカ本土からのリクエストです。日本や他の国への本格的な営業活動はまだし ていませんが、ハワイを訪れる日本人旅行者の関心が、ショッピングから“体験すること”に変わってきていることには注目しています。

 また、日本の旅行会社からの問い合わせも少しずつ増えてきているのも事実です。日本の旅行者にも、表面的な浅い部分でのエコや自然ではなく、もっともっと奥深いハワイを学んでほしい、感じてほしいと思っています。



ありがとうございました

今週のハワイ50選
ハワイ火山国立公園(キラウエア) (ハワイ島)
カラウパパ (モロカイ島)

 

取材:堀内章子