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新生ハワイアンホールの楽しみ方

文化の殿堂ビショップ・ミュージアム
~内容もレイアウトも一新、ハワイアンホールをディープに楽しむ~

 

100527_hwi_top.jpg フラやウクレレ人気に代表されるように、日本でのハワイ文化への関心は今、過去にない盛り上がりを見せている。文化を学ぶ、体験することを目的にハワイを訪れる観光客が増加しているなか、ますます重要度を増しているのが、ポリネシア文化の殿堂、ビショップ・ミュージアムだ。2006年夏から改装のため休館中だった、同館の目玉であるハワイアンホールも昨夏に再公開され、ますます注目が高まっている。すでに訪れたことのある人も、新生ハワイアンホールは再訪する価値が大いにある。今回は生まれ変わったハワイアンホールの楽しみ方を紹介しよう。


設備の改良で展示のバラエティが拡充


100527_hwi_01.jpg まずはビショップ・ミュージアムについて簡単に説明しよう。ビショップ・ミュージアムはハワイを中心とするポリネシア全域の人類学・考古学・自然科学の各分野の研究で知られる博物館。カメハメハ大王直系の末裔だったバーニス・パウアヒ王女を記念して1889年、その夫である銀行家のチャールズ・ビショップ氏が設立した。

 主な施設としては、タヒチやマルケサスなどポリネシア文化圏全体をカバーするポリネシアンホール、プラネタリウム、サイエンス・アドベンチャーセンターなどがあるが、一番の見どころは、なんといってもハワイアンホール。3階建て、吹き抜けのホールのなかには、ハワイの宝ともいえる王族関係の稀少な品々や先史時代の遺物が、数多く展示されている。

 ただし、このハワイアンホールは1887年から1903年にかけて増改築を繰り返して完成したため、不具合もあった。たとえばエレベーターがなく、車椅子を利用する方々が2階、3階に行けなかったこと。そして空調の不備などだ。

 「以前は古い建物で湿気が高かったため、展示できないコレクションがたくさんあった。改装で空調設備を整えたので展示物に優しい環境を維持でき、王族所有の聖書など今まで館内に出すことができなかったコレクションも多数、展示している。フラの楽器は数を増やし、コアウッド製の展示ケースもピカピカに磨いて展示物を見やすくした」と説明してくれたのは、同館のアジア太平洋地区営業&マーケティング担当マネージャーの小宮直子氏。施設の改良の一環でエレベーターも設置し、車椅子利用者のアクセスも容易になった。改装にあわせて展示物のコンセプトも一新したハワイアンホールは、以前とはまるで別物といった印象だ。


子供も楽しめる体験型展示が人気

100527_hwi_02.jpg ハワイアンホールに入るとまず、天井から吊り下げられたトラザメやエイなどの海の生物の模型に驚く。いずれもハワイ神話に縁が深かったり、先祖の化身とされる神聖な生き物だったりと単なる装飾以上の意味合いがあるのだが、視覚的にも効果は上々。以前に比べ、家族連れにも親しみやすい楽しい雰囲気が生まれている。

 各階にはテーマが設けられており、1階のメインはハワイの神々。海や山々、溶岩流など、ハワイの大自然を映し出す大型スクリーンにはじまり、タヒチから海を渡ってやってきたとされるハワイの四大神に関わる神話や火山の神ペレ、鮫の神などを紹介。半神半人マウイやオオトカゲの姿をした精霊モオの話など、ハワイの神話・伝説の全体図がこのフロアで学べる。展示された神像の逸話なども興味深く解説されている。

 2階は古代ハワイアンの生活がテーマ。古代の生活に欠かせなかった要素、たとえば薬草やタパ布(木の皮から作られた布)、ラウハラの葉を使った工芸品作りから、農業、漁業の話、そして植物や鳥、動物を利用して作られた日々の生活のための道具などを広く紹介している。

 しかも、それらを単に展示するのではなく、スクリーンやクイズ形式のコーナーなどで立体的に学べるのが魅力だ。たとえばフラのコーナーでは、映像を見ながら簡単なフラが1曲学べるコーナーが登場。2つのスクリーンがあり、1つは楽器なしでもう1つは楽器つきで踊るバージョンといった工夫も見られる。大人から子どもまでがこのコーナーの前で立ち止まり、初めてのフラに挑戦していた。フラに関しては、今は亡き著名なフラダンサーの貴重な映像が見られるコーナーもある。

 このほか、ハワイ固有種の鳥のコーナーでは3種の鳥の羽を拡大レンズで見る仕掛けや、固有種の花々のコーナーでは香料を嗅ぎ、どの花の香りかをあてるクイズなども用意されている。小さな子供も楽しみながら見学できる工夫が、随所にあるのがいい。


各種体験ツアーやイベント会場も用意

100527_hwi_03.jpg 3階は王族関係と王朝崩壊後のハワイの移り変わりをテーマとしている。ハワイ各島の王族のルーツにはじまり、カメハメハ大王がハワイ王国を築いてからの王族の話や遺品の展示が充実している。6万羽のマモ(小鳥)から少しずつ集めた50万枚の羽根で作られたカメハメハ大王の羽毛のマント、カラカウア王の勲章、懐中時計や、リリウオカラニ女王をはじめとする女王たちの宝石類など、第一級の宝物が一堂に集まり、見る者のため息を誘う。

 さらには、ハワイ王国が白人勢力によって転覆された1893年以降、白人の大統領が誕生した共和国時代からアメリカの準州時代、そしてハワイがアメリカ50番目の州になった現代ハワイまで、ハワイの社会変動が総括的に学べる。

 「ハワイはアメリカのなかで唯一王国があった場所であり、多彩な歴史を持つ土地。せっかくハワイに来たのだから、ぜひハワイの歴史に触れてほしい。きっと今のハワイ事情や、ハワイの多民族文化がより理解できるようになるはず」と小宮氏。

 ビショップ・ミュージアムはこのほか、フラレッスンやハワイ原産の植物が学べるガーデンツアーなど、各種カルチャーツアーも充実している。イベントやパーティ用の大型スペースも複数あり、小宮氏は「ひと味変わった特別な集まりなどの会場を探している場合も、ぜひ問いあわせてほしい」と提案している。
 

 

今週のハワイ50選
ビショップ・ミュージアム(オアフ島)

 

取材:森出じゅん