ハレアカラ山頂ツアーで日の出鑑賞
ハレアカラ山頂ツアーで大自然を体験
~降るような星空とドラマチックなサンライズ~
マウイ島観光のハイライトといえば、ハワイ語で「太陽の家」を意味する世界最大の休火山、ハレアカラだろう。山頂までバスやバンなど車で行くことができるため、観光ツアーで行ったことがある人も多いはず。しかし、昼間に山頂に登って景色を眺めるのと、山頂で日の出を見るのとでは、同じ場所での観光でも印象や感動の度合いがまるで違う。このほど参加したツアーは、プアラニアドヴェンチャーズ主催の「ハレアカラ山頂スター&サンライズトレック」。スターゲイジングとサンライズ鑑賞にショートトレッキングを組みあわせた、同社オリジナルのツアーだ。名物ガイドのヨッシー小暮氏の案内のもと、悪天候に右往左往しながら満喫した約3000メートル山頂での大自然体験をレポートする。
山の中腹で満点の星空を
スター&サンライズ目的の山頂ツアーは、出発が午前2時と早い。滞在地のワイレアから311号線を北上し、カフルイの街をかすめて37号線を南下する。街を抜けると、あたりはまだ真っ暗だ。ひとしきり走った後、ハレアカラ国立公園ゲートの少し先にある公園管理事務所に到着した。ここは標高約2000メートル地点だが、バンを降りた瞬間、思わずツアー参加者全員から歓声が上がる。頭上に一面の星空が広がっていたからだ。天の川がはっきりと分かり、わずかの間にあちこちから「流れ星だ!」の声が上がるほど。しかし、この後とっておきの星空ベストスポットへ案内してくれることになっているので、感動のハイライトはこれからだ。
ところが、公園管理事務所からスターゲイジングのベストスポットまでわずか十数分移動しただけで、天候が180度変わってしまった。先ほどまでの満天の星は霧に覆われて何も見えない。待つこと数分で少しは見えはじめたものの、ヨッシーさんがスーパーレーザーポインターで星座を示しながら説明できるまでには回復しなかった。それにしても、山の天気は変わりやすいという定説をこんなにも実感することになろうとは。公園管理事務所で仰ぎ見たプラネタリウムのような星空が忘れられない。
聖地ホワイトヒルでサンライズ
多くのツアーや個人客は、山頂近くの駐車場エリアで寒さに耐えながらじっとサンライズを待つのだという。プアラニアドヴェンチャーズのツアーは、ここから300メートルの岩場を登ってホワイトヒルの頂上まで上がるのがポイントとなっている。
しかし、山頂は霧に覆われ、震え上がるほどに寒い。暗闇のなか、ライトだけを頼りにごつごつした岩場を登りはじめるが、空気も薄いし、何より強風に飛ばされてしまいそうだ。真っ暗闇のなかで山頂に立つと、いきなりヨッシーさんによる大撮影大会がはじまった。ポーズをとりながら、次から次へと記念撮影をしているうちに、だんだんとテンションが上がってくる。これは参加者に寒さを感じさせないための作戦なのだろう。
暗闇に光が差しはじめてきた。雄大に横たわる山並みと雲海、刻々と変わる空の色が相まって、それはまさにサンライズショーともいえる壮大な光景だ。そんな感動も覚めやらぬうちに、今度は朝日の後光をバックに写真をとりまくるヨッシーさん。寒さと強風で立っていられない状況なのだが、「ふんばれ!」「手を上に!」という大きな掛け声とともに、連続してシャッターが切られていく。気がつけばいつの間にか360度のパノラマを見渡せるほど明るくなり、あれほどの寒さも和らいでいた。
州鳥ネネとの遭遇に興奮
朝日が昇った後は、本来ならクレーター内の「スライディングサンズトレイル」を歩くのだが、今回は天候が悪く見送ることになった。せめてクレーターだけでも見学しようと、カラハク展望台へ向かう。ここでも霧がかかっていたが、数分待っただけであっという間に霧が晴れ、美しいクレーターが顔をのぞかせた。確かにこの神秘的な風景は、ハレアカラでロケをした映画『2001年宇宙の旅』の世界そのものだ。
そのほか、ハレアカラの山頂3055メートル付近で記念撮影をしたり、駐車場脇のビジターセンターで登山証明書を受け取ったり、標高1800メートルから3700メートルまでにしか生息しない貴重な高原植物、銀剣草(シルバースウォード)を見たりと、「見ること・やること」が盛りだくさん。帰り道には、運が良ければハワイの州鳥「ネネ」を見ることができるということで、昨晩星空を見るために立ち寄ったベストスポットに車を停めた。
遭遇率は低いはずなのだが、ラッキーにもつがいのネネがひっそりといるではないか。それどころか少しずつ近寄ってきて、全員がカメラを向けても少しも臆することがない。なんだか鳥の方が悠然としていて、あくまでこちらがビジターであることを改めて認識させられた時間だった。
顧客満足度を上げるプロの技
山を降りた後は、カフルイで朝食タイムとなる。場所は地元の人々にも人気のゴルフ場のクラブハウスで、シンプルなアメリカンブレックファストが用意されていた。疲労と睡眠不足でフラフラの身体にはまさに栄養補給、ことのほか美味しく感じられた。
プアラニアドヴェンチャーズはハレアカラ国立公園内のハイキングツアーライセンスを取得しているため、ホワイトヒルに登ったり、クレーター内部をトレッキングすることができる。それに加え、ハレアカラを知り尽くしたスタッフが、今回のようにコロコロと変わる山の天気に迅速に対応し、参加者を満足させる熟練の技を持っている。
特に、参加者の安全にはひと一倍気を使っているようだ。ホワイトヒル登頂前にチョコレートを配ったり、山頂で半ば強引に写真を撮り続けるのは、参加者が極度に緊張するのを緩和するととともに、いい意味で緊張を保つため。今回は結局、スターゲイジングもクレータートレッキングもできなかったのに、ツアーの満足度は120パーセントだった。本当の意味での「顧客満足」とは何なのかを改めて考えさせられるとともに、旅行者目線でオプショナルツアーに参加したこと自体が新鮮な体験となった。
ところで、ホワイトヒルでの怒涛の撮影は、のちに感動的な写真となって手元に残った。同社が日本人を専門にしている理由を聞いてみると、ヨッシーさん曰く「外国人はいうことを聞かないから」だとか。なるほど、あの極限状態にあって、誰もヨッシーさんの号令に逆らう者はいなかったと、おかしくなった。
ハレアカラ(マウイ島)
取材協力:ハワイ州観光局(HTJ)、チャイナエアライン(CI)、ハワイアン航空(HA)
取材・竹内加恵