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体験レポート:タロ・フェスティバルで伝統的な生活を知る

ハレイワで初のタロ・フェスティバル
~タロを味わい、畑を見学し、伝統的な生活に思いを馳せる~

101202_ghwi_01.jpg エコ意識の高い朝市として地元でも人気のハレイワ・ファーマーズ・マーケットで、今回初の開催となったタロ・フェスティバルが開催された。タロとはハワイアンの主食であったタロイモのことで、特設ブースではタロイモを使ったメニューの試食や収穫したタロイモの重さを競うコンテストが行なわれたほか、エンターテイメントの上演やタロイモ畑へのツアーなども実施。タロイモについて楽しみながら知識を広めたいという願いから、教育的な面も織り交ぜた形のイベントだった。観光客にとっても、地元の人たちとともにハワイの伝統的な食文化に触れる格好の機会となった。



ハワイの伝統食に欠かせないタロイモ

101202_ghwi_02.jpg 冬の足音が近づくころのノースショアには、ビッグウェーブを目当てに観光客やサーファーが押し寄せる。こうした人々の車で一本道のカメハメハ・ハイウェイの混雑がはじまる10月末、ハレイワ・ファーマーズ・マーケットでタロ・フェスティバルが開催された。このタロ・フェスティバルは、USDA(アメリカ農務省)とハワイ・ツーリズム・オーソリティ(HTA)のカウンティー・プロダクト・エンリッチメント・プログラムによる交付金によって開催されたもので、ハワイの伝統文化におけるタロの存在について、改めて考えさせられる内容となっている。

 元来、ポリネシアから運ばれてきたタロイモは、ハワイ語では「カロ」と呼び、タロイモ畑のことを「ロイ」という。かつてのハワイアンにとっては栄養価も高く、大切な主食であったと同時に健康食としても重宝されていた。

 タロイモにはこのような言い伝えがある。空の神と女神の間で生まれた最初の子どもは不幸にも死んでしまい、その子を土に埋葬したところ、タロイモが生えてきた。その後、彼らの子どもは兄であるタロイモを尊敬し、そのタロイモの世話することにより、タロイモから十分な栄養をもらい成長していったといわれている。このようにタロイモは、古代ハワイアンにとって神の化身でもあり、繁栄、長寿、生命の源などを象徴する食べ物としても親しまれてきた歴史がある。

 ハワイでは現在、数々のボランティア団体がタロ畑を増やしていこうという活動をしており、その動きはここ数年の間にかなり活発になっている。ハワイ大学の傘下にあるNPOのカ・パパ・ロイ・オカネワイでは、大学の敷地内にあるタロ畑で、ハワイ大学の学生にタロイモの育て方など2つのコースを用意して教えているほか、小学生から高校生まで畑の見学を受け入れたり、ワークショップなども開催しているという。


タロイモを使ったさまざまな料理が並ぶ

101202_ghwi_03.jpg ハワイのスーパーに行くとスナック売り場に「タロ・チップス」があったり、今ではさまざまな食べ方があるタロイモだが、代表的なハワイアンの食べ方は、なんといっても「ポイ」であろう。タロ・フェスティバルの会場でも、モンキーポッドという大きな木を使って内側が少し窪んだ板を作り、石で造られた「クイアイ」と呼ばれる道具で、蒸したタロイモを叩いて、水を加えながら軟らかくしていきペースト状にするといった、ポイの昔ながらの作り方を披露していた。ポイは離乳食としても使われるほか、高齢者層にも人気のある食品だ。また胃腸の具合が悪い時には栄養食品としても利用される。

 またタロイモの葉は、伝統的なハワイアンフードのひとつ、ラウラウ(蒸し焼き料理)を作るときには材料に巻いて使われ、根は飲み物にもなる。イベント当日はブースで、タロイモの根を使った3種類のジュースを売っていた。私はモロッカン・ミント・アワと呼ばれるジュースを試飲してみたが、決して美味しい味とはいえない。とはいえ、タロイモは葉から根まですべて食用に使われ、捨てる部分はない。

 別のブースでは、タロイモの「フリ」と呼ばれるイモの上部と茎の部分を植えて育てられるように、無料で希望者に配布していた。試食コーナーもあり、さまざまなタロイモを使った料理を売っているブースもあった。また、ブース以外にも、その根の部分の重さを競うタロイモ・コンテストも行なわれ、4.09パウンド(約1.8キロ)のタロイモを育てたチャンソン・ファームが優勝を飾った。

 一方、特設ステージでは、クパ・アイナ、ケ・アロハ、アーニー・クルーズなど、時間毎にミュージシャンが登場し、歌声や演奏を披露した。腰を下ろして、朝食を食べながら音楽に聞き入っている人、フラやタヒチアンダンスの女の人たちの写真を撮る観光客や地元客など、みんなが思い思いのスタイルでイベントを楽しんでいた。


タロ畑でハワイの原風景に出会う

101202_ghwi_04.jpg 今回のタロ・フェスティバルのもうひとつの目玉が、タロイモ畑を見学できるツアーへの参加だ。無料のバスツアーが4回用意されており、バスで10分ほどのモクレイアにある6エーカーほどのタロイモ畑を営んでいる「ナ・マエ・クポノ」を見学する。朝早いツアーは既に予約でいっぱい。最終の午後12時30分出発のツアーにようやく予約することができたほどで、人々の関心の高さがうかがえた。

 ナ・マエ・クポノでは、「タロイモ畑は、とかく人手のかかる仕事が多い。一人ではできないことや時間がかかってしまうことでも、たくさんの人が一緒に働くことでタロイモ畑が維持できる」と、昔から伝わるタロイモ畑の運営方法を教えてもらった。畑に生える雑草の「カリフォルニア芝」は、根を張って広がるのが早いのですぐに伐採しなくてはならないし、ザリガニはタロイモの根を食べるので駆除しなくてはならない。また、かたつむりが卵を生むと鳥がやってきて水中のタロイモの根を傷つけてしまうなど、とにかく人手のかかる作業が尽きないようだ。1時間あまりのツアーでは、ハワイの人々にとってのタロイモの大切さや伝統を維持することの大変さをうかがい知ることができた。

 また、ナ・マエ・クポノではタロイモ畑だけでなく、昔ハワイアンが生活を営んでいた様子をできるだけ忠実に再現し、学校に通う子ども達から大人にも理解を深めてもらう取り組みをしている。例えば、敷地内にはククイの木が植えられていたが、ククイはかつて髪を洗うためのシャンプーとして使われたり、灯りの燃料としてオイルが重宝された。実からとれる汁は口内炎の治療薬となったり、木の葉はワンケと呼ばれ、カパ(樹皮を打ち伸ばして作った布)として衣類に使われたというように、ハワイの伝統的な生活とともに、昔のハワイアンの自然を大切にする気持ちを感じることができた。

 ハレイワ・ファーマーズ・マーケットは毎週日曜日の朝開催されており、地元産の食材やオーガニックのハーブなど、こだわりの品々が並ぶ朝市として、地元でも人気が高い。タロ・フェスティバルの今後の開催については未定だが、タロイモ畑のあるナ・マエ・クポノへの訪問は、教育旅行や学校の遠足などのリクエストベースで可能となっている。


今週のハワイ50選
ノースショア(オアフ島)
ハワイアンフード(全島)

 

取材:堀内章子