• 体験レポート
  • ライフ&カルチャー
  • マーケットトレンド
  • インタビュー

マーケットトレンド:ハワイ・スペシャリスト勉強会を開催

ハワイ・スペシャリスト勉強会を開催
~ニーズでくくるマーケティングで需要創造の知恵を絞る~

101007_ghwi_01.jpg ハワイ州観光局(HTJ)は、JATA世界旅行博に時期を合わせ、第1回ハワイ・スペシャリスト限定勉強会を開催した。同局のハワイ・スペシャリスト制度は、2006年1月にスタート。以来、現在までに約650名のスペシャリストを生み出してきた。同局ではこれまでスペシャリスト限定の現地視察ツアーを開催してきたが、勉強会は初の試み。アンケートの結果などを踏まえ、今後も継続していく意向だ。勉強会では、新しい需要創造をテーマに、専門家のプレゼンテーションやグループディスカッションなどが行われた。
                                      
                                         
より深く、狭いニーズをねらえ

101007_ghwi_02.jpg 新型インフルエンザや経済不況などを受け、苦境に立たされた2009年の旅行業界。今年は全般的に復調の傾向にあり、ハワイも1月から7月の渡航者数が 67万5954人(対前年同期7.2%増)と好調で、2008年を超える数字となっており、「2010年トータルで120万人を目指したい」とHTJ代表の一倉隆氏は語る。

 日本マーケットのハワイ渡航者を分析したデータによると、ハワイへの渡航経験がなく、かつハワイへの旅行意向が高い「憧れ中・きっかけ待ち」の割合は37.1%。今後に期待がかかる層であり、ここをどう取り込んでいくかが課題のひとつだ。そこで勉強会では、博報堂のマーケティングプランナー北川貴樹氏を招き、潜在顧客を掘り起こす「需要創造型マーケティング」と題したプレゼンテーションが行われた。

  10年前と近年の生活意識を比較したデータによると、近年は時間やお金に余裕がなく、将来に対して悲観的な人々が多い。そのため全体的に保守的な傾向にあり、旅行は依然関心が高いものの、資金は“仕分け”の対象となっている。かつてのようにノリで「ハワイでも行く?」という気分は生まれにくく、より明確な目的や強い動機なしに旅行が具現化しないのが実情という。

そこで、今後は誰のどんな需要を増やすのかをハッキリさせていくことがマーケティングの鍵となる。例えば、結婚10年目のカップルという狭いターゲットに向けた「スイートテンダイヤモンド」のように、新しい動機や行動ルールを提案・定着させることで需要を生み出していくという方法だ。

そのためには、広く一般に浸透をはかる「マス投網型」より、確実な需要を創り出す「銛打ち型」でより狭いターゲットを狙うのが効果的。例えば、中高年向けに脳を鍛えるゲームソフトを作ったり、首都圏のキャリア女性向けに新しいがん保険を設定したりすることでヒット商品が生まれている。旅行における一例としては、恋愛シミュレーションゲームと国内の温泉地がコラボレーションした例がユニーク。現地の観光業界が全面的に協力し、1カ月で数千人という需要を生み出した。

そうして見ると、マーケットはもはや性別や年齢ではなく、より濃く、深く、そして狭いニーズでくくられてくる。今なら、健康志向やダイエット人気を取り込んだ「フィットネス系」、学ぶニーズを汲み取った「学習系」、男女ともに増え続ける独身需要をねらった「おひとりさま系」などもねらい目だ。こうした傾向をハワイでみると、ホノルルマラソンやフライベントなど、たった1日の催しが大きなマーケットを動かしている例が同様といえるだろう。


ニーズの特定でアイデアも多彩に

101007_ghwi_03.jpg 需要創造型マーケティングのプレゼンテーションを受け、参加したスペシャリストは3班に分かれてディスカッションを実施した。今回取材した第1班には、福岡県や石川県からの参加者もいて、バラエティに富んだ顔ぶれとなった。この班でもやはりホノルルマラソンに対する問い合わせは増えており、また、3世代、 4世代といったファミリーの需要も目立っているという。特にファミリーの場合、就学前の子供を持つ家族のフットワークが軽く、理由づけとして、還暦や古希といった祖父母世代のイベントで特別感を演出できるメモリアルな旅に注目が集まった。

 そこで、第1班が導き出したアイデアは、「おねだりハワイ」。地方のシニア層は、還暦や古希といった節目が理由づけになり、メモリアルを祝ってもらうシニア層はもちろん、親世代や子供にもうれしい旅を創造できるのがメリットだ。

 第2班のテーマは「B級グルメ系inハワイ」。テレビ番組で勝ち残った日本のB級グルメ5社とハワイのB級グルメ5社が競い、カピオラニ公園でグランプリを決定するという内容。これにより、日本マーケットをハワイへ動かすだけでなく、ハワイから日本へのインバウンド需要も見込める計画となっている。

 第3班は、おひとりさま系をターゲットにした「婚活」がテーマ。ハワイ好きという共通点にゴルフなどのオプションをつけてカップル成立をねらうというもの。カップルが成立すれば、その後の挙式やハネムーン、子供と一緒にハワイ、さらにはハワイの海への散骨というように、人生の節目にハワイを訪れるリピート需要を生み出せるという期待も込められている。

 参加者はいずれもハワイ・スペシャリストというだけあって、ディスカッションは大いに盛り上がりを見せた。3時間近いプログラムの終了後は、世界旅行博のハワイブースにて懇親会も行われ、第1回勉強会は盛況のうちに終了した。


2011年は“スポーツ”もターゲット

101007_ghwi_04.jpg 勉強会では、HTJが2011年のプロモーション展開についても発表した。ハワイは現在、順調に需要が回復しているものの、不況の影響を受けて消費金額はマイナスとなっている。マーケット別では挙式やハネムーンが減少傾向にあり気になるところだが、MICEマーケットは2008年レベルまで回復。また、隣島のみの渡航者が、1月から7月の前年比でカウアイ島31.4%増、マウイ島22.6%増、ハワイ島82.3%増と軒並みアップしており、「この傾向は2 年前から。特にハワイ島はテレビを含むメディアへの露出が効いた」と一倉氏。さらに、形態別ではパッケージ旅行が微減となっているのに対し、パッケージ旅行以外と完全個人手配が大きく伸びている点が特徴的だ。

 同局では2011年に、基本コンセプトの「ディスカバー・アロハ」、2009年に提案した「ハワイ50選」および写真家・高砂淳二氏とのコラボレーションを継続。その上で、「人生の中のハワイ」のタグラインは、「想像より、おもしろい。ハワイ」に変更する。また、ウェディングおよびハネムーン、3世代ファミリー、アクティブシニア、アラサー・アラフォーの女性層、そして教育旅行といったターゲットも継続する一方で、2011年は新たにスポーツを切り口とするプロモーションを開始する。

 ハワイ渡航者のアンケートで、スポーツは「ハワイでやりたいこと」ベスト10のうち5つを占めている。そこで同局では、他のデスティネーションに対して優位性のあるラン、ウォーク、バイク、ゴルフの4つをテーマに「旅スポ・ハワイ」の名称で新しいプログラムを立ち上げる。具体的には、12月12日のホノルルマラソン前に専用サイトをオープンして情報提供を徹底し、各旅行会社とのタイアップで商品造成へと駒を進めていく方針だ。また、「ハワイの走り方」を制作し、首都圏のランニング・ステーションやランニング・イベントで配布。ゴルフに特化したプレスツアーの実施なども予定している。

 ハワイの需要喚起には、10 月31日に就航する羽田/ハワイの直行便にも大きな期待がかかる。首都圏だけでなく地方マーケットの活性化につながるとして、同局ではホームページ内に情報サイトをオープン。羽田線のメリットをはじめ、日本航空(JL)、全日空(NH)、ハワイアン航空(HA)のスケジュール、モバイルサイトでのプレゼントキャンペーンなどを掲載して盛り上げをはかっている。また、好調な隣島については、各旅行会社とともにビッグ・アイランドのキャンペーンを展開していく予定だ。

 

取材:竹内加恵