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ハワイ・ライフ&カルチャー:アウトリガーカヌーのシーズン到来

海のさまざまな表情に出会える、アウトリガーカヌーの魅力
~レース観戦からお手軽体験まで、古代ハワイの伝統と触れ合う~

110610_hw1_01.jpg  マリンスポーツの宝庫ハワイのなかでも、地元の人々の間で最も馴染み深いスポーツを挙げるとしたらカヌーパドリング(カヌー)だ。野球やサッカーと同じように学校教育にも取り入れられているほどで、ハワイ州の誇るスポーツ競技の個人種目がサーフィンならば、団体スポーツはカヌーといえるだろう。6月に入ると、各地でカヌーレースが開催され、本格的なシーズンを迎える。また、アウトリガーカヌーはハワイの歴史や文化に不可欠なものでもある。今回は、新たなハワイの魅力として、現地の人々の、アウトリガーカヌーの楽しみ方を紹介しよう。
 

アウトリガーカヌーのルーツとは

110610_hw1_02.jpg ハワイ諸島に人々が定住したのは約5世紀ごろ。ポリネシアの島々から食料や動物をカヌーに載せて航海し、移住を始めた人々がハワイアンの祖先だといわれている。彼らは安定性のある双胴船に帆を付け、風の凪いだときにはオールで漕いで、太平洋の島々を航海した。2007年に日本を訪れた双胴船のホクレア号は、1976年のアメリカ建国200周年記念プロジェクトの一環として、現代によみがえらせた、古代ハワイの航海カヌーである。

 カヌーは移動手段のほかに漁のときにも役立ったが、小型のものは波乗りやレースなどの娯楽にも使われ、それが現在の競技用アウトリガーカヌーに発展した。アウトリガーカヌーがハワイ州のスポーツのなかでも一目置かれる存在である理由は、ハワイアンのルーツと深く関係しているからである。

 競技用のアウトリガーカヌーは、コアの木で作ったものやグラスファイバー素材のものが主流。船体の左側には安定性を与えるための浮きであるアウトリガーが付いているのが、ハワイアン・アウトリガーカヌーの特徴だ。カヌーには1人乗りから2人、4人、6人乗りと各種サイズがあるが、競技として最も人気の高いのが6人乗りのものだ。6人でパドルを漕いで進むが、最前列の1番シートの選手が作るペースに合わせてタイミングよく漕ぐことが大切で、最後尾の6番シートの選手が舵を取る。外洋に漕ぎ出て、海のうねりや潮の流れとともに海のさまざまな表情を楽しむことができるのが、競技者にとってのアウトリガーカヌーの一番の魅力である。


レース観戦の楽しみも

110610_hw1_03.jpg ハワイの6人乗りカヌーレースはレガッタが6月と7月、長距離が8月から10月までとなっており、毎年3月くらいから練習が始まる。ハワイではアウトリガーカヌーを楽しむためには、各島に点在しているカヌークラブに所属するのが一般的だ。カヌークラブには大人だけでなく子ども用プログラムもあるので、一家そろってカヌークラブに属しているファミリーもいる。レガッタレースが開催される日曜日は、朝早くから海辺にテントを張って、お弁当を持参してレースを応援する家族の姿が多く見られる。

  レガッタレースの開催会場は、オアフ島では空港近くのケイヒラグーン、ノースショアのハレイワビーチ、西オアフのマイレビーチ、東海岸のカイルアビーチ、ワイマナロビーチなど。もし観光客がレースの行われるビーチに居合わせたなら、のんびりと観戦するのもおすすめだ。

 アメリカ合衆国の独立記念日である7月4日には、年に一度だけワイキキビーチでレガッタレースが開催される。普段は安全性を考慮してサーファーとスイマーを優先しているワイキキでカヌーレースができるとあって、カヌーパドラーにとっては思う存分にワイキキを堪能する日である。ワイキキの波をいかにキャッチするかがポイントで、カヌー同士のクラッシュあり、アクロバット的なカヌーライドあり、勝ち負けよりもお祭り気分で盛り上がるレースなので、ワイキキの観光客もビーチから、あるいはホテルのバルコニーから見学してはいかがだろう。

 長距離レースでは数十キロの距離を漕ぐものもあり、有名なのはモロカイ島からオアフ島まで海峡を渡り65キロを漕ぐレースだ。アウトリガーカヌーの世界選手権ともいえる。女子が「ナ・ワヒネ・ケ・オ・カイ」、男子が「モロカイ・ホエ」と呼ばれるレースで、女子は9月の最終日曜に、男子は10月第2日曜日にそれぞれ開催される。ヒルトン・ハワイアン・ビレッジ・ビーチリゾート&スパ前のデューク・カハナモク・ビーチがゴールとなっており、5時間から6時間かけて漕いできたチームが次々とフィニッシュするシーンは感動的で、一見の価値ありだ。


カヌーライドを気軽に体験

 さて、実際にアウトリガーカヌーを漕いでみたい、乗ってみたい、という人にはまずはワイキキビーチでのカヌーライドをすすめたい。サーフボードをレンタルしている場所では、たいてい体験カヌーライドも提供している。6人乗りカヌーのシートには、ベテランのスタッフが座り、体験者は必ずベテランの間に座るので、初心者でも安心だ。「ワイキキビーチサービス」では2ウェーブ、つまり、2回波をキャッチして1人15ドルという料金でカヌーライドのサービスを提供している。気軽に波乗り気分を楽しめるアトラクションといえよう。

 オアフ島のカヌークラブの場合、1度か2度の体験参加を認めることが多い。アラワイ運河沿いやマジックアイランド、ケイヒラグーンで練習しているクラブの中には、レクリエーションとして12人で漕ぐ双胴カヌーを使って初心者を体験参加させるケースもある。ただ、カヌーが海のスポーツである限り、泳げることと非常時の対応のための語学力は、体験参加であれ必須条件だといえよう。

 なお、モロカイ島からオアフ島までを漕ぐレース「ナ・ワヒネ・ケ・オ・カイ」「モロカイ・ホエ」では、タヒチ、オーストラリア、カナダ、カリフォルニア、ヨーロッパ各国からの参加が年々増加しており、世界的な広がりをみせている。日本からも男子チームに加え、2009年には初めて女子チームもレースに参加した。最近は日本からカヌーのトレーニングをするためにハワイに合宿に来る若者もいるほどだ。今後は、カヌー体験のみならず、レース観戦やトレーニング、さらにはレースの参加といった分野での送客の可能性も考えてみたい。

 

今週のハワイ50選
ノースショア(オアフ島)
ワイキキ(オアフ島)

 

取材:スミスゆかし