旅行業界におけるITソリューションの現状とその活用法 (3/5)

魅せる広告、集客につながる広告とは?―鶴本浩司氏

seminar_mktvoice.jpg オンラインでのビジネス展開を考えた場合、「最も大切な要素は価値のあるコンテンツ、そして良質なトラフィックの2つだけ」と言うのは鶴本氏だ。充実した商品のリスト、そしてそれらを魅力的に見せる方法をわきまえていても、ユーザーからのアクセスがなければ、つまり見る人がいなければまったく無意味。特にトラフィックは安定的で良質なものを構成しておくべきである。

 ネットユーザーがウェブサイトを知るきっかけとなる情報源は、79%がインターネット検索によるものだという。日本の場合、検索エンジンのシェアはヤフーが50.2%、グーグルが35.2%であり、50%がそれらの媒体上のリンク集や掲示板の広告からウェブサイト情報を得ている。ヤフーのほうがグーグルよりも利用者が多いが、これは日本だけで、欧米では圧倒的にグーグルの利用者が多い。インバウンド広告で海外に向けて発信したい情報の場合はそのあたりも媒体選びの際に考慮したほうがいいとのこと。ただ、日本でもグーグルの成長率は著しく、逆転の可能性もあることは忘れてはいけない。


・顧客になるまでの3段階

 そこを踏まえて、ユーザーがどのように企業のウェブサイトを訪れ、顧客になっていくかを、段階を追って見てみる。ステージ1は、まずそのサイトとの「接点、出合い」だ。ユーザーは話題になっているキーワードから検索をかける、あるいは広告からウェブサイトの存在を知る。また、SM(ソーシャルメディア)もきっかけになっている。サイトの存在をはじめて知り、最初にアクセスする状態だ。

 そしてステージ2は「再会、検討」。ステージ1の段階からさらに興味やモチベーションが上がった状態でもう一度サイトを訪れることで、このときもキーワード検索のほか、企業名や商品名を検索ウィンドウに打ち込んで目当てのサイトを表示させる「ナビゲーション検索」をする人もでてくる。また、メールマガジンやコミュニティに入るなどしてそのサイトをウォッチする場合もある。

 ステージ3は最終段階で、「継続、エンゲージメント」すなわちユーザー(顧客)になってもらった状態だ。ここでも目当てのサイトを見つけ出すためにナビゲーション検索をする人がいる。

 この3段階が安定したトラフィックができるまでに一般的に踏まれる手順だが、どの段階でもキーワードにせよナビゲーションにせよ、検索からウェブサイトを探し当てる人が必ずいる。つまり検索したときに自社のサイトがトップに出てくる状態であることが必須で、検索結果の最初の10件(1ページ目に表示されるサイト数は10件程度であるため)に入るための策を講じなくてはならない。ちなみに、人は7回くらい同じものを見ると自然にそれを記憶するといい、常に上位に表示されたり、注目される位置に表示されたりするウェブサイトであれば、表示されること自体に宣伝効果があるともいえそうだ。


・SEOとSEM対策

 検索でトップに出るためには、SEO(検索エンジンの最適化)、SEM(キーワード連動型広告)、SMの3つの方法があると鶴本氏は言う。SEOの場合、ただ関連キーワードをつけるだけではなかなか思うような効果をあげることはできない。

 たとえばカンタス航空の場合、「シドニー 航空券」というキーワード検索をしても、無数にあるオンライン旅行会社のサイトが上位に表示され、トップには出てこない。しかしシドニーマラソンの特集ページをサイト内に作成し、マラソン情報とパッケージ商品を紹介したところ、「シドニーマラソン」で検索すると上から3番目に表示されたという。これでシドニーマラソンに興味のある人に対し「シドニーへ行くならカンタス航空で」というメッセージを送ることができ、ある程度の広告効果が得られたのではないか。このように、多くの"競争"から脱却するためには的確なキーワード設定が必要で、そのためにはサイト内にテーマのあるページを盛り込み、漠然としたイメージだけのキーワード設定から脱却したい。

 一方のSEMは、上記のようにキーワード検索をした場合、広告エリアに自動的に検索されたキーワードに設定された広告が表示されるというもので、お金を払えば誰でも上位に掲載されることができる。ただし、こちらは同じキーワードで広告を出す競合他社がいるので、その中からよりユーザーに注目されるためにはコピーライティングが秀逸である必要があるという。タイトルに会社名などを入れるのではなく、「失敗しないツアー選びとは?」や「海外で交通事故! 保険は大丈夫?」といった謎解き型や不安解消型などで興味をひき、30文字程度の紹介文でセールスポイントを簡潔に入れるのが効果的だ。

 SMの場合は、より多くの個人が同じキーワードを持つ情報を発信することで注目を集め、検索される・検索キーワードのトップに躍り出ることができる。やはり注目はツイッターで、その「広がり方は計り知れない」。また、海外からの利用者が多いフェイスブックはインバウンドの広告に使えるといい、ファンページを作成し、それを閲覧者がお気に入り(Likeボタンを押す)として登録すると、その人のアカウントにその情報が自動的に掲載される仕組みだ。また、GPSを利用して自分の位置情報を知らせるフォースクエア(foursquare)もこれから大きな広がりを見せる予感だという。