消費者の購買行動からみたオンライン旅行市場 (5/5)
4:共有
インターネットは情報発信が格段に便利になったといわれる。なかでも、顔をあわせた人同士のコミュニケーションだけでなく、興味や関心が同じ人たちなどがインターネットを通じて仲間になることができる点は大きい。そして、自らの体験を共有することで、コミュニティを形成したり、コミュニケーションを深めたりしている。
旅行でも同様のことがあり、フォートラベルやトリップアドバイザーがその代表例だ。旅行先のほか、旅館やホテル、航空会社に対する口コミを集めたサイトは多く、先に述べた通り、予約する過程でサービスの質や対応、同様の旅行体験を経験済みの消費者を探し、参照、あるいは質問するといった行為で、形のない商品の内容の精査がされている。
また、ミクシィでも海外、国内、デスティネーション、航空、ホテルなど旅行関連をテーマにしたコミュニティが形成されている。ミクシィで特筆しておくことは、旅行と関係ない音楽のテーマが実際に旅行につながる場合もあることだ。たとえば、ギターを好きな大学生とすでに会社をリタイヤした悠々自適の人とがある場所に集まって演奏会を開く、と盛り上がって旅行が発生している事例も見受けられる。
購買行動別に旅行サイトを見返ると、ユーザーを多数集めるサイトがいまだ優勢に見える。だが、自社の強みを際立たせて集客を伸ばしつつあるサイトも少なくはない。今後はいかにユーザーに際立った強みを見せていくかをスタートアップのときに打ち出していく必要があるだろう。その強みは価格でも商品内容でもかまわないだろうが、現在のユーザー動向からすると「誰かに教えたくなる商品」という共有の要素が重要だ。その理由は、購買行動の決定は主体的に検索するだけでなく、情報交換が簡便なブログやツイッターなどのソーシャル・メディアに重心が移りつつあるからだ。いかにユーザーの日常に入り込むかが、今後の旅行需要拡大や潜在化では重要なポイントになってくるだろう。
性別、年代別、年収別といった顧客の購買性向や、その前段にあたるサイトへのアクセスログは膨大な量になる。それを解析し、どのような課題や問題があるかをしっかり把握して対策を打つか否かで、大きな差が生まれてくる。これらを分析するには、様々なソリューションが提供されており、効果的に使いこなしリードタイムを短くすることが、今後のビジネスを拡大する上で命運を握る要素になりつつある。
さらに分析を踏まえ、次の展開の仮説と試験的マーケティングを短時間で繰り返し実践していくには、自社にあうソリューションを取捨選択し、かつ一定期間で見直しをするサイクルを定着しておきたい。特に、オンラインを利用して売り上げを伸ばしたいと考える場合は、様々な施策の効果を多面的に分析し、有効か否かをすばやく判断し、PDCAサイクル(Plan/計画、Do/実行、Check/評価、Act/改善)をすばやく繰り返すしか成功に導く方法はない。