JTBのIT戦略-ITPro EXPO講演より (1/3)
ITの進化とその活用は、単にコスト削減、業務効率化だけでなく、企業の中・長期的なビジネスモデルの構築を含めて経営戦略に欠かせない要素となっている。最大手のジェイティービーも2004年度に交流文化産業への転換を掲げ、2005年度には長期IT戦略を開始。2014年には日本の旅行消費の40%がインターネット経由、店頭販売は現在の70%程度になるとの予想のもと、同戦略の最終年度となる2015年度に向け、次世代型のビジネスモデルに対応したシステム構築とコスト削減を推進している。先月、日経BP社が開催した「ITPro EXPO」でのJTB常務取締役経営企画担当・事業創造担当・IT 企画担当の志賀典人氏の講演から、JTBのITへの取り組みとともに旅行業に求められるITの進化をまとめた。
>「IT」は旅行業の基礎
>テーマは次世代旅行業モデルの実現とIT活用によるコスト削減
>全社的にIT戦略を推進するために
「IT」は旅行業の基礎
JTBでは旅行業界の環境変化に対応すべく、2004年度には総合旅行産業から交流文化産業の転換を掲げ、2006年にはホールディング化、分社化など大幅に経営形態を変更したが、その基礎はITであると志賀氏はいい、「ITは経営戦略上、最も重要」との認識を示す。
というのも、「旅行業の本質は予約決済と旅行情報の提供であり、それを支えているのはIT」であるからだ。ただし、志賀氏は旅行業の本質である2つの機能の社会的有用性が現在、ITの進化による直販化、情報入手の簡易化やグローバル化により低下したと指摘し、この機能にいかに付加価値をつけていくことが重要、との認識を示す。交流文化産業への転換はこの「付加価値」の創出であり、旅行業の機能を支えるITは新ビジネスモデルの基礎として重要性が増しているとの考えだ。
一方で、幅広い業務をカバーするシステムの構築には困難もある。志賀氏によると旅行業におけるITは、鉄道や航空会社の巨大予約システムの構築に呼応する形ではじまり、中小企業の多い宿泊機関やフェリー会社、バス会社については、各旅行会社がそれぞれの在庫システムをベースに独自の予約システムを作り上げた。さらに、1990年代には単なる予約システムから営業戦略機能へ、2000年代にはインターネット上の販売チャネルとしての対応など、新たな役割を担うようになる。
こうした変化の中で、JTBの基幹システムは、1980年代に作られたシステムをベースに増改築を重ね、次々にシステムを立ち上げた結果、同じような複数のプログラムが存在することになってしまったという。そのためデータ管理も分散し、システムコストの増大や業務の複雑化、システム導入の効果測定の困難化につながった。これらの課題解決とマーケット変化に対応した次世代旅行業モデルへの対応を視野に、2005年度から10年間の長期IT戦略を開始したのだ。