JTBのIT戦略-ITPro EXPO講演より (2/3)
テーマは次世代旅行業モデルの実現とIT活用によるコスト削減
JTBが開発する次世代型旅行業モデルに対応したシステムとは、リアル店舗とコールセンター、ウェブを結びつけるクロスチャンネルの実現と着地型モデルの開発、マーチャンダイジング機能の強化、ウェブチャンネルの活用とそれに対応したバックオフィス業務の集約化が可能になるもの。これはすべて、JTBがめざす交流文化産業の元になるものとの考えだ。一方でコスト削減も重視し、インフラの仮想化やクラウド化を活用して2015年度にはグループ全体のシステム経費を2009年度比で20%削減することを目標としている。
具体的には、長期IT戦略は2005年度から2008年度の第1段階と、2009年度から2015年度の第2段階に分けて実行している。第1段階は現行のシステムが持つ課題解決が主なテーマ。まず、ITに対するガバナンスの強化を目的とした「IT戦略委員会」を設置し、意思決定や開発プロセスにおけるコミュニケーションギャップの緩和をはかった。また、システムの柔軟性とコスト削減を目的にシステム基盤をオープンシステムへ移行。これは2009年4月に完了し、仕入れや商品造成、販売機能を含めた新ルックシステムや新国内旅行システムなど、基幹業務にかかわるシステムが再構築された。
そして第2段階で、次世代旅行業モデル実現に向けたシステム作りとコスト削減に着手。開発の基本コンセプトとして重視するのは、データベースの共有化とインターフェイスの標準化、APIの活用による他エンジンとの結合の簡素化など柔軟性の確保、クラウドコンピューティングなどの活用によるノンコアシステムなどの外部化だ。また、基幹系システムのインフラ統合やグループ会社システムのインフラを統合。さらに業務面では財務や会計、CRM戦略、国内・海外商品戦略、グローバルビジネス戦略にも対応できるアプリケーションを開発していく。
ただし、システム開発には課題があり、例えばAPIの活用については、オープン系同士での結合が標準化されることでコスト面での効果を発揮するが、相手のある問題でありJTBだけの対応では解決できない。また、ノンコアシステムの外部化においても、旅行情報のデータシステムや人事システムなどを安易にノンコアとしてよいかなど、ノンコアとコアの区分を流通構造の変化を見極めながら、検討していく必要があるとする。
さらにクラウドコンピューティングでは、安全性や信頼性、責任問題などが不安要素としてあり、充分に解消されていない。とはいえ、コスト削減を目的にクラウドを取り入れる考えに変化はなく、当面は旅行周辺事業のシステムインフラをプライベートクラウド化していく予定。志賀氏はこうした課題をあげつつ「これらがクリアできれば、JTBのシステムの将来像ができあがる」と説明した。長期IT戦略プロジェクトは、2012年度から順次稼動される。