ITソリューションの有効活用(1) (3/3)

ITの進化が旅行分野にもたらす2つの変化

 具体的な手法を伝える前に、先進的な機能を持つスマートフォンや新しいウェブサービスが旅行分野にもたらしたものは何か。そこを考えてみたい。一番大きく変化したのは、ユーザーの行動である。ユーザーの視点で整理すると変化したポイントは2つだ。


ポイント1:新たなユーザー体験

 第1のポイントは、これまでに体験したことのない方法でユーザーが情報を取得しているという点だ。

 例えば、スマートフォンなど携帯端末の進化により、ユーザーは旅行中においても移動しながら多くの情報に触れられるようになった。またGPSを利用して現在地を取得することが可能となり、自分のいる位置を中心に情報を探すことができるようになってきている。

 この機能を使えば、不慣れな旅先でも地図や写真、道案内など詳細な現地情報を得ることができる。近くのショッピングスポットや現地ツアーを探すことも容易だ。加えてツイッターやFacebook(フェイスブック)などソーシャルメディアの利用者が増えたことにより、旅行中に思ったことや周囲の状況などその場で情報を共有するのも珍しいことではなくなった。

 旅行会社としては、これらの機能を利用し、ランドオペレーターと連携して現地でのショッピングクーポンやミールクーポンの情報を配信すれば、「新しい旅行商品の付加価値」を提供することも可能だ。


ポイント2:情報入手経路の変化

 第2のポイントは、旅行情報の入手経路の変化だ。旅行を検討する際、友人などの信頼できるユーザーから得た情報で行動するケースが増えている。ユーザーは関心事を軸にネットワーク化されており、その中でやり取りされる情報には高い信頼が置かれ、リアルタイムで急速に広がる傾向がある。

 例えば、ツイッターなどでは、情報伝達力をいかして在庫空席をさばくためのタイムセールが可能だ。これにより、ユーザーはリセールや間際予約など、ダイナミックできめの細かいサービスが受けられるようになった。また、ソーシャルメディア内で友人や旅慣れた人がすすめる宿、プランなどから旅の行き先や内容を決めることもできる。

 このように、ソーシャルメディアは旅行会社にとっては新しい販促チャネルとして味方につければ強力な武器となるが、元来コマーシャリズムを毛嫌いする傾向が強いメディアでもある。商品やサービスに対するネガティブな評価も強い拡散性を持って広がるというリスクについて、同様に理解しなければならない。



ユーザーが求めるのは「CtoC」目線のコミュニケーション

  ITの進化とともにユーザーの購買行動や情報の収集・発信を取り巻く環境は大きく変化した。かつてガイドブックにしかなかった旅先の情報は、誰もが無料で獲得できる時代となった。今や、旅行者自身がソーシャルネットワークで「旅行を評価する」という行為を通して、旅行販促の一翼を担う時代となった。

 ユーザーの視点に立ちこの変化を見れば、旅行会社が「BtoC」という従来の感覚で販促アプローチをしていても駄目だという事に気づくはずだ。ユーザーが旅行会社に求めているのは「CtoC」目線でのコミュニケーションである。オンラインなのに人肌の温もりを感じるコミュニケーション、つまり売り手と買い手の関係性を超越した旅行のプロとして、旅の楽しみ方や優れた旅行商品や現地サービスの提案を求めているのだ。旅行会社の「次の一手」とは、ITを利用しこのような旅行者との関係深化をはかることである。

 次回は、この「次の一手」を加速させているモバイル端末の進化や通信インフラの整備状況などについて、さらに詳しくお伝えしたい。