通信販売業界における海外インセンティブツアーの現状
社)日本通信販売協会・理事 柿尾正之氏に聞く
インセンティブツアーでモチベーションを高める
成績優秀者の報奨旅行として、また社員の団結力を高めるため、大小さまざまな企業が実施している海外へのインセンティブツアーだが、実際、どのような企業が何を目的に、どのような内容のツアーを行っているのかということは、現状ではあまり知られていない。そこで、社団法人日本通信販売協会の理事を務める柿尾正之氏に、通信販売業界におけるインセンティブツアーの現状について聞いた。
社団法人日本通信販売協会(JADMA)とは
1983年に設立された通信販売業界を代表する公益法人。通販業者に対してアフターケアの徹底、広告表現の適正化、通販110番での相談などを行っている。2008年現在の会員者数は約460社。
http://www.jadma.org/index.html
海外へのインセンティブツアーを実施している通販会社は多いようですが、
実際はどのような会社が行っているのでしょうか?
柿尾氏:具体的な統計をとったことはありませんが、比較的家族経営的な企業で、社内の結束力を高めたいと思っているところが多いように思います。また地方の企業は、都会よりも娯楽が少なく社員が毎日家と会社の往復だけになりがちなせいか、海外旅行に対してより積極的な傾向があるようです。
通販会社のインセンティブツアーの目的とは?
柿尾氏:インターネットやカタログで営業する通販会社は、個人の売上げを競う訪問販売の会社と異なり、売上げが個の力に偏ることはありません。そのため成績優秀者の報奨旅行という意味合いではなく、単純に社員を労い、士気を高めることが目的になっているようです。そういう意味では「社員旅行」と同じですね。
人気の行き先は?
柿尾氏:よく聞くのは1週間ほどかけてヨーロッパに行くケースでしょうか。日本から遠く、日数もかかるので、個人的に休みを取って行くのは難しくても、社員旅行なら堂々と行けますよね。毎年行き先を変えているところも多いようです。通販会社は小売店と異なり、全員が一斉に休むことができません。そのため2班に分けて行く会社もあるようです。
そこまでして、なぜインセンティブツアーを実施するのでしょうか?
柿尾氏:少し前までは、若い社員に「会社の外で上司の顔なんて見たくない」という風潮がありましたが、最近は社員旅行や運動会などの家族的なコミュニケーションを通して、社員のモチベーションを高めることが再び見直されているようです。同じ旅行でも、国内の温泉には行かないけど、海外なら行きたいという人も多い。企業側としては、どうせ実施するなら効果が高いほうが良いですよね。また給料を上げるよりも、経費で落とせるインセンティブのほうが都合が良いのです。インセンティブは業績が下がれば行き先の見直しや中止も可能ですが、給料は一度上げたら、簡単には下げられません。
企業にとってインセンティブツアーの効果とは?
柿尾氏:当然、社員のモチベーションが高まり、結束力が強まることが考えられますが、残念ながら現状では、実施後の効果測定を行っている会社は皆無に近いようです。「これだけの費用をかけた結果、モチベーションが何パーセント高まった」という検証は本来とても大切なはずです。今後はただ旅行を楽しむのではなく、効果について分析していくことが必要だと思います。
今後、通販業界のインセンティブツアーは増えていくでしょうか?
柿尾氏:通販業界全体の売上げは近年、前年比10%増程度で推移しています。高齢者の増加などに伴い、通販で物を買う人はこれからますます増加していくはずです。通販業界が元気になれば、当然インセンティブを実施する企業はもっと増えていくでしょうね。
ありがとうございました。