• 現地レポート
  • ピックアツプ特集
  • コラム
  • ケーススタディ

「MICEとは?」⑲

市場動向 「MICEとは?」⑲  
「MICEサプライヤーのマーケティング(2)」

0805_01.jpg 先回のMICEサプライヤーのマーケティング(1)ではサプライヤーに焦点をあて、MICEビジネスに必要なマーケティングのキーワードとして、下記の5つをあげて解説しました。

 

 

 

1.MICEサプライヤーはミーティング・プランナー  を支援し、そのMICEの目的を理解する必要がある
2.独自・区別・差別
3.充分なプランを立てる
4.全員で取り組むという姿勢
5.MICEのうち、もっとも得意なセグメントからはじめる

 今回もサプライヤーのマーケティングに焦点をあてて、未来に向けてMICEビジネスを効率良く開発していくのに必要な5つのヒントをあげ、解説していきます。

  

6.MICE専属チームを育てる

 MICEは通常、ミーティング、展示、レセプション、宿泊、アクティビティ、コンテンツ、サイトシーイングなど多くの要素を集約して開催されます。

 また、サイト・インスペクションや開催前の準備など、多くの打ちあわせが必要となります。これらの要素を横断的に捉え、知識やスキルも充分に備えた専門職のチームを育成し、迅速な対応を心がけることは、競合他社との差別を計る上でも大変必要で重要なポイントです。MICE専門のセールス・チーム、セールス・チームが獲得した案件をフォローし、MICE顧客の窓口としてのコーディネーター・チームとの役割分担を明確にしてはじめて、常に変化するMICE顧客のリクエストにも対応が可能となるのです。

 ALL-IN-ONEで窓口を一本化し、MICE顧客への迅速な対応をする「仕組み」をつくることは、MICE顧客にとって最も大切な「時間を節約する」という一番のベネフィットになるのです。

 

7.ミーティング・プランナーをプロとして扱い、支援する

0805_02.jpg ROI(対費用効果)がますます要求される現代では、予算を管理し、成果の上がるMICEを計画・実施して行く責務を遂行しなければならないミーティング・プランナー(MP)は大きなプレッシャーを背負って仕事をしています。 

 彼らが出したい成果を支援し、めざすアウトプットに限りなく近づけるために、プロダクトやサービスを提供するのがサプライヤーの仕事です。前回解説したように、それぞれのMICEは明確な目的を持ちます。そのゴールを達成する戦略・戦術をMPと一緒に考え、創造性を発揮した提案を心がけてください。ベテランのMPになれば年間数百件のMICEイベントを経験しています。彼らをプロとして扱い、充分にコミュニケーションを取れば、実際の運営時に大きなトラブルも避けることが可能となるのです。

また、ベテランのMPとの仕事は、有益な知識やスキルを学ぶ良いチャンスになります。

 

8.MICE顧客に柔軟に対応する

 成功するMICEを可能にするには(1)ハードウェア、(2)ソフトウェア、(3)人、の3つの要因があります。(2)ソフトウェアというのは、コンピューターのソフトウェアだけではなく、サプライヤーのポリシーやルール(規則)なども含んでいるのです。多くのMICEの施設が一般商品(コモディティ)化する現代で差別化を可能にするのが、人的なサービスも含めた柔軟な対応といえます。

 「あれもできない、これも駄目」では、リピート客になることは期待できないでしょう。米国などの公的な施設も、民間の業者の導入などでどんどんカスタマー・サービスの質を高めて、MICE顧客のニーズに対応しています。社内のポリシーやルールを押しつけないということを強調したいと考えます。

 

9.全体としての部門横断的なイールドに焦点をあわせる

 今、なぜMICEなのか?の最大の理由は、レジャー客などと比べ、MICEは少なくとも倍の売り上げがあがるというデータがあるからです。ホテルでいえば会議、レセプションなどの宴会、レストラン収入、そして宿泊と全体的に横断的に利益を俯瞰する必要があります。同じ時期に複数のMICEグループの引き合いがあるのであれば、当然全体的な収入とイールドをシュミレーションして、どれが一番自社にあったグループなのかを選択する必要があるのです。

 今後はサプライヤーに直接、RFP(提案依頼書)や問いあわせというボールが飛んでくる時代です。自社の施設のプロダクト、サービスだけではなく、デスディネーションというエリアでの提案も充分に準備をして、イールドや事業領域を拡大して収入を増やすことを考えなければなりません。

 

10. ブローシャーやウェブ・サイトなどにMICEの言葉を散りばめる

 確かにMICEという言葉が便利なので頻繁に使っているのはサプライヤー側ですが、マーケティングの原則のナンバー1は最初にはじめるということに尽きます。

 顧客サイドがMICEという造語を理解していないとしても、それぞれのビジネス―ミーティング、インセンティブ、コンベンションあるいはコングレス、エキジビションは、当然理解をしているので、すべてのコンテンツにこれらの言葉を散りばめることが必要です。またわが国以外の近隣諸国や、MPにはMICEは一般語になりつつありますので、特に英文の表示にはMICEを散りばめる必要があるのです。

 ITの発達で地球上のすべての地点はドット(点)のひとつになりつつあります。すべてのサプライヤーの発信力は限りなく、スクラッチになりつつあるのです。 

 

筆者:MPI Japan(Meeting Professionals International) 浅井新介 会長

【プロフィール】
 

mice_0103.jpg東京生まれ。MICEビジネスのプランナーとして、イタリアへファッション・ビジネスの視察を実施、以後30年に渡り業界の経験を持つ。その後Westin Hotels 極東地区営業支配人、ユナイテッド航空代理店担当課長、法人営業部長、日本地区旅客営業部長を歴任しディストリビューションの整備にも貢献。スターウッドホテルズ日本の依頼により宮崎のシーガイア再生の為にセールスマーケティングの責任者として赴任。海外、国内の数千名規模のMICE獲得とその受け入れに成功し、リゾート再生に貢献した。